あたくし飲食の仕事の前には、ほとんど建築業関係の
仕事をしてきたと書いてきましたが、実は一度だけアルバイトで
一ヵ月ほど南4西2わたなべビル4Fにあった「pub盃唐亭(はいからてい)」
と言う洋風居酒屋で働いたことがありました。
多分、22年前の今頃でした。
その年の夏にも飲食店に興味がありススキノでバイトする店を
探しておりましたが、何故か行く店、行く店が「オカマの店」でした。
なぜ「オカマの店」ばかり面接に行ったのかと言うと、
単純に未経験者OKとか、日払いOKと言ったように経験もお金も無い人には
好都合な条件を書いていたからなんですね。
まぁ、うちは「オカマの店ですよ~」とはあからさまには書いていませんので、
知らずに行く人も多かったと思います。
もし何かの拍子でそこで働いていたら、まったく違った人生を歩んでいたんだろうな~
と思ったら、つくづく「運命」って奴は不思議だな~と思います。
(なんせ面接に行った5軒中3軒はオカマの店だったので)
一旦は「これは多分、夜の仕事をするなと言う暗示なんだな~」
と思い諦めたのですが、ちょうど昼間やっていた「生コン打説(だせつ)」
の仕事を辞めちゃったので、アメリカへ行く前に短期で働ける所を探していた訳です。
そこの店には、30代後半の店長(うわっ、今のあたくしより下だ!)と、
ちょっとイカツイチーフとバーテンの先輩と、あたくしと同じくらいに入った、
さわやかな大学生のアルバイトでした。(たまに手伝いで店長の彼女がいました)
初めての飲食店のバイトなので、おしぼりや掃除、セッティング、オーダー受け、
配膳、グラス洗いといった仕事があたくしの主な仕事で、
もう一人のさわやかなアルバイトはあたくしのような無骨者とは違い
先輩のバーテンさんに可愛がられていたので、同期なのにあたくしが
一番下っ端の仕事ばかりやらされて、その大学生は先輩と仲良くカウンターで
女性のお客さんのお相手をしておりました。
でも、不思議と嫌な感じはしませんでしたし、もしあたくしが先輩の立場でも
同じだったと思います。
それにいかんせん、あたくしは要領が悪く仕事を覚えるまでに時間が掛かり、
よくテーブルを間違えて料理を持っていって、後ろから店長が追いかけてきて、
頭を叩かれるなんてしょっちゅうでした。
まかない(従業員の食事)の時にキッチンに入るのですが、(キッチンと言っても、
四畳半くらいのキッチンです)いつも大きなキャべジンの瓶があり、店長もチーフも
それを粒を数えるでもなく適当に飲んでおりました。
ある時に半個室のような所に、あまり好ましくない女性を連れたグループが来た時に、
店長以下、チーフも先輩バーテンダーも、ここぞとばかりに
「かとう、お前の活躍する場面が来たぞ」なんて言われて、その半個室を担当させられ
(もちろん、さわやか大学生にはさせません)、口々に、「頑張れよ」とか
「相手はメダカ組だから気にすんな」と今までにないくらいの思いやりの言葉をかけられて
無事何事も無く対応出来ました。
たまに社長が来るのですが、とっても温和な顔をした人で、忙しい時には
サロンを巻いて手伝ってくれたりもして、その社長が来た時には同期の大学生
と同等に扱ってくれるので張り切って働いたものです。
ある時、社員にボーナスを渡しに来ましたところ、あたくし達アルバイトにも
「ラーメン代だから、あまり期待しないで欲しい」と言われて、お年玉の袋の
ようなモノを頂きました。後から見ると2000円も入っていて非常に嬉しかった
記憶があります。(なんせ、ザ・ノルマ2000!だったので)
そこは12月いっぱいで辞めて、翌2月にアメリカへ行き帰ってきて本格的に
この仕事に就きました。それからしばらくして、あたくしが「OPERA」の店長をしていた
ら面接に来た人がいて、なんとそれは「先輩のバーテンダー」でした。
一番下で使っていた人間の店に面接に来ることになるなんて、なんていう
「因果」でしょう。お互い気まずい思いをしていたら、先輩の方から「気まずいだろ」
と言ってくれて、違う店へ面接に行ってくれました。
また、ある時に店長でバリバリやっていたら、今度は店長が偶然若いアルバイトを
3人くらい連れてきて飲みにやってきました。挨拶をすると思いだしてくれて、
「へぇ~、いい店だな、偉くなったな~」と言ってくれて、それからも若い衆を連れてきて
くれたり、彼女と二人でカウンターに来たりもしてくれました。
来るたびに「出世したな~」とか「良かったな~、頑張れよ」と自分のことの
ように喜んでくれて、その頃には彼女さんも勤務先(病院)の友人を連れて
来るようにもなっていたのです。
ある時、彼女さんに、
「あっ、000さん、最近、店長の顔を見てないんですが?」
「店長はお店辞めて、名古屋に車の部品を作りに行っちゃったよ」
それから店長とはお会いしていませんが、会う機会があれば改めて
お礼を言いたいと思います。