ちょうど3年前くらいに、学生時代の先輩と久しぶりに
話す機会がありました。
その先輩とは久しぶりで、確かその先輩の結婚式以来だったので
15,6年ぶりです。
先輩が結婚する前までは、何かと顔を合わせていましたが
結婚を機に”パタッ”と皆の前に顔を出すことがなくなりました。
皆は「きっと”嫁さん”のせいだよ。あの”嫁”はキツイからな。」と
言うのが、周りの一致した意見でした。
そんな先輩と久しぶりに会い(飲み)、先輩が”ポツリ”と
「なぁ、かとう。俺の人生って何だったんだろうな?」
「えっ!?何かあったんですか?」
「う~ん・・・・・、何かあったと言うか・・・・・。」
「もしかして奥さんと離婚でもしたとか?」
「それは、もう8年前にしてるよ。」
「えっ!!離婚してたんですか!?」
「したよ。悪いか?」
「いえ、知らなかったもんで。」
「別に言うことでもねーしな。」
「まぁ・・・・・、じゃあ、何か」
「う~ん、40を過ぎてさぁ、仕事もそれなりだし、金に困っているとか
そう言うんでもないんだけど。な~んか、このままでいいのかな~と思ったら、
この先も、このままで気が付いたら5年、10年なんてあっという間に過ぎて
定年になって・・・・・。って考えたら、このままでいいのかな~ってな。」
「あの、先輩。大丈夫ですか?今流行の”うつ”って言うやつですかね?」
「い~や。それは違うと思う。確かに急に何もしたくなくなったり、人と会ったり
話したりするのが嫌になる時もあるけどな。」
「あの~、それってじゅぶん”うつ”の仲間ですよ。」
「うそ!!」
「ホント。だって俺もよくなりますもん。”予備軍”なんですって。
まぁ、俺はそんなの昔からなので、いまさら何とも思ってないけど。」
「そっか~?俺は違うと思うけどな。だってよ、普通に生きてたら
煩わしいことや面倒なことっていくらでもあるだろ。きっと、そっちの仲間だろ。」
「確かに。」
「かとうは、どうなんだ?このままでいいのかな~って思わないか?」
「ま~ったく思いますよ。今も。」
「だよな~!」
「ですよね~!」
「で、どうしようと思うのよ。」
「それが問題なんですよね。」
「だよな~!」
「ですよね~!」
「で、俺さぁ。この前さぁ、これじゃあダメだ!と思ってよ旅に出たんだよ、旅に。」
「旅にですか?」
「おう、旅に出た。」
「どのくらい、どこへ行ってたんですか?」
「ん?日帰り。正確に言うと一泊だけど。」
「えっ!?日帰りですか?でも、正確には一泊ってなんですか?」
「実はさぁ、休みの日に意外と早く目覚めてよ、テレビでアサヒ緑健の番組で
レールの上を外人の女の子が歩いてんの見たら、なんか急に旅に出たくなってよ。
しかも列車で。知ってか、アサヒ緑健の番組?」
「青汁のですよね?」
「うん。なんか、その線路のシーンを見たら”これじゃダメだ!家にいたり、
いつもと同じ生活なんかしてたら何も変わらない!”と思ってな。」
「で、旅に。」
「まぁな。でも、あれだなちゃんと行き先や目的を決めないとダメだな。」
「えっ!?行き先や目的を決めなくて行ったんですか?」
「あぁ、何か一々決めるもの面倒だし、時間に縛られるのも”旅”ぽくないだろ。」
「いや、いや。ダメですよ。家出じゃないんだから。行き先と時刻は把握してないと。」
「そうなんだよ。俺も後から気付いたんだよ。意外と大事だって。」
「大事ですって。」
「でも、別に海外に行くわけでもないし。」
「まぁ、確かに。で、結局どこへ?」
「うん、南の方へ。海沿いの光景を見たくなってな。あれだな、襟裳岬まで
行こうと思ったら、襟裳までは列車はいかないんだな、あれ。」
「そうなんですよね。様似(さまに)までなんですよ。」
「で、また引き返して、違う列車に乗り換えしているうちに、段々と暗くなってきて
飽きたから帰ろうと思ったらよ、もう交通機関のない時間だったのよ。
で、駅のベンチで寝かせてもらって始発で帰ってきたよ。」
「・・・・・。」
「でもよ、かとう。俺、思ったわ。もう少し仕事をしながら自問自答して、
それでも変わらなかったら、俺は行くぜ!」
「行くって、どこへですか?」
「ん?決まってんじゃん。”俺、今日も生きてるぞー!神様ありがとう!”って
言えるような所へ。」
「・・・・・、それってどこですか?」
「今は言わないよ。」
「言えないんですよね?」
「なぁ、かとう”人生は片道切符”なんだよ。」
それからは、途中参加して来た人たちと昔話に花を咲かせました。
「先輩、なんで結婚してから皆と遊ばなくなったんですか?
皆が言うには、三次会で俺がケツを出して踊っていたから、奥さんに
嫌われて、来なくなったって。」
「ハハハハー!そんな噂があったのか!?近いけど、違う。
実は、かとうの後ろで”やっち”がチ0ポを出していたからなんだよ。」
「えーっ!!知らんかった。でも、目くそ鼻くそですよね。」
「まぁな。」
それから、その先輩とは会っていませんし、また”パタッ”と現れなくなりました。
今日、写真付の葉書が届いていました。
「かとう、”人生は片道切符”だぞ!!」とだけコメントが書いており、
どこの国の人かわかりませんが、ジャングルのような所で村の人たちの中心で
満面の笑顔の葉書でした。。。。。
どこへ行ったかより、そんな所にも写真付の葉書の技術があるんだな~と
そっちの方が驚きでした。。。。。
最近、あたくしも目が覚めるといつも思います、
「このままじゃ”ダメ”だって。」