群馬県のある高等学校に片腕の女の子がいました。
この子は左手が義手であるにも関わらず、体操でもなんでも
自由にこなし、卓球部のキャプテンまでして、
県大会で大活躍するほどの腕前でした。
片腕のハンディにもくじけず、いつも明るく元気で、
かつ友人に優しく皆から好かれていました。
担任の先生は、彼女に感心しながら、
何故そんなに明るく生きることが出来るのか、
一度訊ねてみたいと思っていましたが、多感な年頃です。
なかなか聞くことはできません。
彼女の卒業後、先生は彼女に長い激励の手紙を書きます。
すると、彼女からも長いお礼の返事がきました。
その返事の中には片腕を失った時のことや、
またなぜこうして元気でいられるのかが詳しく書かれてありました。
四歳の時、交通事故で片腕をなくしたそうです。
この事故の後、小学校へ入る為の指導を受ける為に、
ある特別な施設で二年間を過ごしました。
その施設を出る時に、園長先生が言ってくれた、
愛情のこもった一言が、彼女に大きな生きる力を
与えたのだそうです。先生はこう言いました。
「小学校へ行くとネ、お友達が珍しがって、お手々どうしたの?
見せてッて言うと思うの。そうしたらネ、辛いだろうけどがまんして、
見せてあげてちょうだい、そうすればお友達は、
お手々のこと二度と言わなくなるわ。
これねェ、園長先生の最後のお願い。わかってくれるわねェ」
園長先生は涙を流しながら、彼女をしっかり抱きしめて言いました。
彼女もまた思い切り園長先生の胸で泣きました。
小学校へ入るとやっぱり「手を見せろ!」と言われました。
でも彼女は一滴の涙も見せずに堂々と義手をはずして見せました。
彼女の長い手紙は
「私を見て、もし自分もしっかり生きようと思う人がいるとすれば、
それは私を支えてくれた多くの人々に対するせめてもの私のご恩返しです」
という文章で終わっていました。
仏教例話大百科(昌善寺住職 久米慶勝氏 談)より。