メティエ・ダール - 伝統的シンボルに敬意を表して~紫禁城内にある北京故宮博物院、元副研究館員の協力のもと4つの限定モデルを製作
ヴァシュロン・コンスタンタンは、新作「メティエ・ダール - 伝統的シンボルに敬意を表して -」シリーズにおいて、中国伝統文化へのオマージュとして、14世紀に初めて登場した伝統的なモチーフであり、明清時代の宮廷特有の文様である「海水江崖」を2通りの解釈で表現しました。ヴァシュロン・コンスタンタンの熟練職人が、メゾンの芸術工芸や文化に対する深い敬愛を独創的に表現し、「海水江崖」をあしらった文化的な賛辞を完成しました。
帝政中国で発展した岩に打ち寄せる波頭の描写は、今回のメティエ・ダールの作品製作においてメゾンの職人たちに協力した故宮博物院の元副研究館員、宋氏の専門分野です。中央の時・分針を駆動させるキャリバー2460は、直径38mmのピンクゴールドまたはホワイトゴールド製ケースに収められ、ダイヤルは中国文化の象徴を力強く、そして美しく表現しています。
実り豊かな文化的協力
ロレックス スーパーコピー「メティエ・ダール 伝統的シンボルに敬意を表して」シリーズは、14世紀から20世紀初頭の中国最後の王朝時代に華開いた歴史と文化の旅へと誘います。この時代特有の装飾に対する造詣を深めるなか、メゾンはその装飾美術にとりわけ関心を持ち、宮廷建築のほか、調度品や磁器、特に「龍袍(りゅうほう)」と呼ばれる皇帝や皇族の吉服(祭礼時に着用する装束)にもみられる「海水江崖」文様に着目。豪華な刺繍が施された絹の祭礼服は、その文
様によって独特の象徴性を伝えていました。
同治帝(在位1861~1875)の礼装
この研究にあたり、メゾンはかつて北京故宮博物院の副研究館員を務めていた宋氏に助言を求めました。中国の歴史とシンボリズム(象徴主義)の専門家である宋氏の協力のもと、メティエ・ダールの4種類の限定モデルのダイヤルの「海水江崖」文様に焦点を当てて研究されました。宋氏によって広範に記録されたこの描写は、海にそびえ立つ岩に激しく打ちつける波濤を表現しています。吉服の裾や袖口部分に刺繍されたこの装飾は、身に着ける者にとって縁起の良いものとされていました。
文化的な賛辞
新石器時代にすでに中国の多様な工芸品の意匠として取り入れられていた水や山のモチーフは、1千年紀を通じてますます具象的に表現されるようになりましたが、この2つを組み合わせて使用するようになったのは後代のことです。
明(1368~1644年)と清(1644~1911年)の時代に入り、この文様は発展をとげ、万暦帝(1573~1620年)の時代に正式に「海水江崖」と命名され、皇族専用の文様となりました。その名が示すように、この文様では、海中にそびえ立つ岩に勢いよく押し寄せる波が長くうねる線で表現されています。
荒波の中にあっても動じることなくそびえ立つ山々が人生における予期せぬ変化にも対峙する皇帝の在り方を象徴。
中国語では、「潮」と「王朝」の「朝」は同音異義語であり、「崖」には「生姜の芽」という意味があり、この海を見下ろす急斜面の縁にそのフォルムを見ることができます。水と山は中国では伝統的に強い領土の象徴でもあることから、「海水江崖」を祭礼用装束にふんだんにあしらった皇帝の姿は、安定を体現していました。波浪の上にそびえる揺るぎない岩が平和と長寿の象徴であるように、皇帝は国家の富と繁栄を保証する存在でした。この文様は人気を博し、家具、彫刻、装飾品、建築などに用いられ、あらゆる社会階級に広まっていきました。
職人技巧へのオマージュ
直径38mm、18Kピンクゴールドとホワイトゴールド製ケースの心臓部で鼓動するのは、その美しさとコンパクトなサイズ感(直径26.2mm、厚さ3.60mm)により選ばれた自社製キャリバー2460です。中央の時・分針を駆動するムーブメントの構造がダイヤルとの美しい一体感を実現し、過ぎ行く時間に広がりと奥行きを与えます。
約40時間のパワーリザーブを備え、原産地と時計製造技術を証明するジュネーブ・シールのすべての基準に準拠しています。22Kゴールド製ローターには、波や潮の流れを想起させるモチーフが繊細に彫金され、ダイヤルの意匠と呼応しています。
「メティエ・ダール - 伝統的シンボルに敬意を表して - 永遠の流れ」~クロワゾネ・エナメルと彫金
満天の星空を背景に、生姜の芽をかたどった植物に縁取られた山々の頂が、高波に洗われています。中国の伝統的な装飾を尊重し、色彩豊かな美しさを持つこの作品は、中国発祥のクロワゾネ・エナメル技法を用いた傑作です。「景泰藍」とも呼ばれるこの技法は、明の景泰時代に最盛期を迎えました。多彩で複雑なフォルムを組み合わせた躍動的なデザインに相応しい技法が選択されました。
「海水江崖」文様を形成するエナメル装飾を描く220本の金線がを敷き詰めるのに、輪郭形成だけでも50時間以上の作業を要しました。
その後、色と彩度に応じてエナメルを複数回にわたり施し、各層毎に炉で焼成します。
このタイムピースの特徴である豊かな色合いに到達するまでに70時間を費しています。さらに文様に実体を与える金線のクロワゾネ(仕切り部分)を際立てるために、最終的なポリッシュ仕上げを作品に施します。
最後に、半透明のエナメルコーティングが、繊細な線と古来の技巧で見事に昇華した、この非常に建築的な構成の作品に独特の光沢を与えます。
エナメル装飾を際立たせるため、ベゼルにはコウモリのモチーフが全て手彫りであしらわれています。中国では「蝙蝠」の「蝠」と、「福」が同音であることから、コウモリが吉兆をもたらすものと考えられてきました。中国の伝統装飾では、5匹のコウモリが一緒に見られることが多く、それぞれが「五福」(長寿、富、安定、徳、幸運)を意味しています。
このタイムピースでは彫金職人が、この動物の特徴的なシルエットを表す連続した渦巻きで構成されたフリーズにより、コウモリを表現しています。
「メティエ・ダール - 伝統的シンボルに敬意を表して - 月光」~グラン・フー・エナメル、彫金、ジェムセッティング
もう1つの「海水江崖」文様の作品で目指したのは、モノクロームのベースに奥行きのある効果を実現することでした。モデルによって18Kホワイトゴールドまたはピンクゴールドで製作されたダイヤルは、ダイヤモンドがセッティングされたくぼみに施された連なる波浪、立体的なブルーのエナメルが施された部分、山々が見事に融合し表現されています。熟練職人たちが様々な技法を駆使して作りあげたこの文様は、繊細でありながら独特の美しさを醸しだしています。
ゴールド製のダイヤルは、3つの部分構成となっています。まず海を表す部分を深いブルーを、塗り重ねる毎に炉で焼成するエナメル層を幾重にも重ねるグラン・フー・エナメル技法で表現。
続いて、忍耐力を必要とする彫金が施されます。波の描写に使われたこの技法は、エナメル部分に渦巻き模様を描きます。
その後、熟練職人がこれらの溝にホワイトエナメルを施し、そのエナメルも焼成されます。このきわめて薄い層が、精巧に作り出された質感を背景に繊細な影を作り出し、海の躍動感をあらわしています。
2つ目の部分となる、そびえ立つ岩山に沿った潮の流れには、ジェムセッティングが用いられています。潮流ひとつひとつにブリリアントカットダイヤモンドが手作業で繊細にクローズセッティングされ、このタイムピースの名前の由来である月光を想起させます。
ダイヤルの3つ目の部分は、連なる岩に波が打ち砕ける様子により立体感を添えています。同系色のシャンルヴェ・エナメルのインレイが丹念に彫金され、風景の奥行きを際立たせています。岩山の描写には、遠近効果を強調するためドライポイントも使用されています。
潮流を彩るブリリアントカットのダイヤモンドの煌めきは、灰がかった月光の柔らかな輝きを放ち、ベゼル全面にあしらわれたブリリアントカットダイヤモンドと見事に調和しています。
クリスチャン・セルモニ(スタイル&ヘリテージ ディレクター)へのインタビュー
――「海水江崖」文様のアイデアはどこから得たのですか?
『ヴァシュロン・コンスタンタンのデザイン部門は、今回のメティエ・ダール製作にあたり、これまでに発表
してきた中国の春節を祝うシリーズの時計のダイヤルによくみられる意匠を補完するために、中国の伝統文様をテーマにしようと考えました。この研究を進めていた際、故宮の装飾と皇族の儀式用衣装に探究すべきいくつかの興味深い方向性を見出し、宋氏とのやり取りによりその確信を得ました。同氏は北京故宮博物院に研究館員として在籍されていた、中国の象徴主義の専門家です。宋氏はヴァシュロン・コンスタンタンのジュネーブにあるマニュファクチュールを複数回訪れ、メゾンのチームに貴重な知見を共有してくださいました。「海水江崖」文様は、こういった経緯のなかで候補にあがったのです。宋氏には、メゾンがこの文様を2つの異なった方法で表現するために必要な資料や深い見識に基づく助言をいただきました。この様に完成したタイムピースは、それぞれの個性をもつ一方で、共通した象徴性があるのです。』
――メティエ・ダールの技法はどのように選択しましたか?
『「海水江崖」は、宮廷建築や祭礼時の装束に用いられる文様で、非常に力強いグラフィックと豊かな色彩、波濤のうねり、激しく打ちつける波頭と重なり合った渦巻き模様、その上にそびえ立つ山石という縦の構図が特徴です。そのため、この文様の極めて多彩な色合いと複雑さの両方を表現できる技法が求められました。「メティエ・ダール - 伝統的シンボルに敬意を表して ‐ 永遠の流れ」には、中国発祥のクロワゾネ・エナメル技法を選びました。グラフィック要素の強い作品の色彩と非常に精巧な形状の再現が可能なこの技法の選択は当然の成り行きといえるでしょう。一方、「メティエ・ダール - 伝統的シンボルに敬意を表して ‐ 月光」のダイヤルでは、単色のベース部に奥行きをもたせることを目指しました。この仕上がりを可能にする唯一の方法が彫金です。エナメルとジェムセットを施したくぼみと、その他の浮き彫り部分により立体感を高め、これは「フラット・ウォッシュ」で施された均一な単色層を採用することで達成することができました。』
――ロレックスコピーヴァシュロン・コンスタンタンの「メティエ・ダール」コレクションでは、しばしば歴史や古代文明にインスピレーションを得ていますが、今回の新作もその流れを汲むものでしょうか。また、その背景を教えてください。
『これまでにもお伝えしてきたように、「メティエ・ダール」は、メゾンにとって、芸術、歴史、文化を、時計や宝飾品の製作に用いられる装飾技術で讃えるコレクションです。歴史で興味深いのは、古代文明が非常に洗練された高度な装飾技術をもっていたという点です。こういった技術のなかには、近代の工業化やデジタル化の波により徐々に失われてしまったものもあります。この分野における最も優れた作品から着想を得つつ、その技巧にも脚光を当てることは、芸術的な職人技術の次世代への継承を積極的に行ってきたヴァシュロン・コンスタンタンならではの取り組みといえるでしょう。伝統文様をテーマにした本シリーズにおける最大の焦点は、刺繍作品をどのように表現するかでした。これらの伝統文様を時計のダイヤルに再現するにあたり、文様の特質をいかしつつ、中国の歴史において重要な時代を象徴する豪奢な皇族の吉服に焦点を当てるべく、メゾンのチームと職人たちは創造性を最大限に発揮する必要がありました。』