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MB&F オロロジカルマシン Nº11 「アーキテクト」を発表~

スイスの有名な建築家、ル・コルビュジエは「家は、住むための機械である」という言葉を残しました。MB&Fのマシンはいわば「住める機械」です。マシンが語るストーリーは、私たちを様々な場所や時間へといざない、時には別世界へと連れていってくれます。MB&Fのマシンは着用するものではなく、体験するものだと言えるでしょう。


Credits:Eric Rossier

腕時計は家とは違うので、理解しにくいコンセプトかもしれません。家は家、時計は時計。間違えようがないほど、まったくの別物ではないか、という声も聞こえてきそうです。しかし今回、MB&Fは家と時計の境界線を曖昧にする、グレーの鉄筋や打ち立てのコンクリートを思わせる最新モデルを生み出しました。

それが、ロレックススーパーコピー 代引きN級品オロロジカルマシン Nº11 アーキテクトなのです。


マキシミリアンが作った家
1960年代半ばから後半にかけて、建築界は実験的な段階に入り、それまでの10年間とは大きく異なるデザインが生み出されました。戦後、建物は実用性を重んじた直線的な形となり、特定の目的を果たすための建築物が急造。しかしその後、その反動として、驚くほど人間主義的なアプローチを特徴とする小さなムーブメントが起きました。ただし、建築学者が言うところの「人間主義」とは異なるものです。

ここでの「人間主義」は、人の体や動きの曲線を考慮して作られているという意味であり、それらの建物は、人体の形、人間の目が捉える球状の視野、人が手足を動かした時に描く円、吐息の丸み(肺を膨らませる吸気、寒い冬の日に、車の窓に後光のような水蒸気の輪を作る呼気)をテーマとして設計されたものでした。

これらの建築家は、自らを建築家と呼ぶ代わりに「住居学者(habitologist)」と称し、まるで地球からブクブクと吐き出された気泡のような、あるいは大地から湧き出てきた、折れ曲がった指のような形の家を建てました。彼らが作る住宅は、泡のような形だったり、波打っていたり、人体の腱のように弧を描いたりしています。住居学者が建てたそれらの家を目にしたMB&F創設者のマキシミリアン・ブッサーは「もしこの家を時計にしたらどうなるだろう?」と考えたのです。

マキシミリアンが作った「家」の中核をなすのは、二重のドームを持つサファイアの屋根の下に配された中央のフライングトゥールビヨンです。空間的にも機能的にもこの時計の中心となっている四つ葉形のアッパーブリッジは、壮麗な教会や寺院の高窓を彷彿とさせます。あるいは受胎の瞬間に細胞分裂する接合子(卵子と精子が結合したもの)を思い浮かべる人もいるでしょう。回転するコア部分から外に向かって、シンメトリーに配されている4つの立体的なモジュールは、この家、すなわち「HM11 アーキテクト」の4つの部屋となっています。

家の構造全体が土台の上で回転し、各部屋にアクセスできる仕組みで、部屋同士の角度は90度になっており、1つの部屋を真正面に配置することも、廊下にあたる部分を真正面にして、部屋が左右に向くよう配置することもできます。向きを自由に変えられるこの構造には、実用的な側面もあります。HM11 アーキテクトの構造はエネルギー効率に優れており、時計回りに45度回転させるたびにカチッとクリックする感触が指に伝わり、クリックごとに72分間のパワーを香箱にチャージすることができます。つまり、360度、10回転させると、HM11は最大96時間のパワーを蓄えることができるのです。

4つの部屋のインテリアはすべて、光沢のある白い壁にサファイアクリスタルの窓ガラスという共通したデザインとなっているが、その機能は部屋ごとに異なっています。まず1つ目は、時間と分を表示する時刻の部屋。アワーマーカーの役割を果たしているのは棒の先に小球が付いたパーツで、やや大きめで明るいポリッシュ仕上げのアルミニウム製の小球が12時、3時、6時、9時を示し、それ以外の時刻は、より暗い色のポリッシュ仕上げのチタン製小球で表されています。時針と分針の先端に配された赤い矢印は、落ち着いたデザインの時刻の部屋を彩るアクセントとなっています。

時刻の部屋の90度左にあるのは、パワーリザーブ表示の部屋。時刻の部屋と同じデザインでまとめられたこの部屋では、先端に小球が付いた棒状のパーツと赤い矢印が付いた針が、HM11の香箱のパワーリザーブ残量を示します。時計回りに進むにつれて5つの小球の直径がだんだんと大きくなり、直径2.4mmの最も大きなポリッシュ仕上げのアルミニウム製の小球は、96時間フルチャージされた状態を示します。

その隣の部屋には(家庭ではお馴染みだが)時計ではほとんど見られない機器である、温度計が装備されています。HM11では、金属板を2枚貼り合わせたバイメタルストリップを用いた機械的な温度表示システムが採用されています。高精度の電子温度計やサーモスタット制御のスマートホームが普及している現代においては、この方式は古風に思えるかもしれません。この機械式システムは外部からの電力なしで機能するもので、ディスプレイには摂氏バージョンと華氏バージョンがあります。

最後の部屋は白い空洞になっており、唯一のデザイン要素として、MB&Fのバトル・アックスのモチーフが刻まれた小さな丸いバッジが、サファイアクリスタルの窓にはめ込まれています。この一見何もないように見える空間は、実は、HM11の時刻設定のためのリューズとしての役割を果たしており、透明のモジュールを引っ張ると、カチッと音がして開放されます。これは、HM11の正面玄関であると同時に鍵でもあり、これを回すことで時刻を合わせることができます。

HM11の各部屋の外壁はポリッシュ仕上げのグレード5チタン製。光が降り注ぐ中央の開放的なアトリウムは、二重ドームのサファイアクリスタルの屋根で覆われています。屋根の下には自社製HM11エンジンが搭載され、フライングトゥールビヨンのテンプが2.5Hz(18,000vph)のペースで鼓動します。PVD(物理蒸着)処理でカラーリングした地板とブリッジは、オゾンブルーと太陽の光を思わせる温かみのある5Nゴールドの2色展開。HM11のこれら2つのエディションは各25点ずつの限定生産となります。


HM11のケースについて
マキシミリアン・ブッサーが考案したオロロジカルマシン Nº11 アーキテクトの発想の源となった家々に共通していたのは、有機的なデザインでした。そのフォルムは遊び心に満ちていて、意外なところに膨らみや突起がある奇想天外な形でした。実験的なアイデアを形にするにはどうすればいいのだろうか。「もし家を、時計にしたらどうなるだろう?」という質問には、どう答えればいいのだろうか。最初の設計図が作られたのは2018年のことでした。作成したのはMB&Fのデザインプロセスの中心人物であったエリック・ジルーで、HM11のレイアウトには、彼の建築のバックグラウンドがしっかりと反映されていました。周りに4つの部屋が配された中央の吹き抜け。透明で光を取り込むデザイン。外観と作用し合うインテリアの空間。その曲線的な形状は、人体の形との親和性が高いという意味では原始的であり、枠に縛られないヴィジョンは未来的であると言えます。

HM11 アーキテクトの2つのローンチエディションに採用された素材は、チタンとサファイアクリスタル。どちらも機械加工が極めて難しいことで知られる素材で、複雑な形状の時計に使用できるようになったのは、ここ20年ほどのことです。HM11のケースの下半分には、内側と外側の表面の形が異なる、高度な立体形状のグレード5チタン製シェルを装備。HM11の4つの部屋の上部キャップは別々に加工されており、これはムーブメントを取り付けてからでないと、キャップを装着できないことが理由です。HM11のケースの製作ではフライス加工、仕上げ加工、品質管理といった工程が必要で、すべての作業が完了するまでに約1週間を要します。


Credits:Eric Rossier Lres

MB&Fのオロロジカルマシンは、時計に使用されるサファイアクリスタル製パーツを高度に洗練させたことで高い評価を確立してきましたが、オロロジカルマシンNº11も、もちろん例外ではありません。HM11のケースには、外に面しているサファイアクリスタル製パーツが6つあります。その中で最も大きいのが、2つのサファイアクリスタル製ドームを同心円状に重ねたパーツで、透明なアトリウムの屋根の部分に使われています。射出成形のアクリルと冒険的なデザインが熱心に取り入れられた1970年代の住宅建築には、こうしたドーム型天窓が多く見られます。

時計業界において前代未聞の直径約10mmのシースルー・リューズからは、ムーブメントがよく見えます。サファイアクリスタルを使用したこのサイズのリューズは、審美的には申し分ないインパクトを放っていますが、克服すべき技術的課題もあります。リューズは、ムーブメントに水やホコリが入る主な経路となるため、時計の性能を損なわないよう防水・防塵のためのガスケット(パッキン)が必須です。従来の時計のリューズに装着されるのは直径2mmほどのガスケットで、ほとんどの場合、それで十分保護できます。そうしたガスケットの多くはゴム状ポリマー製で、リューズを回すと摩擦が生じるが、ごくわずかなので、通常の使用では気にならないレベルです。

一方、オロロジカルマシンNº11の場合、リューズが通常の5倍の大きさであるため、従来のガスケットを単純に大きくしただけでは、サイズに比例して摩擦が大きくなり、リューズにブレーキがかかって使えなくなってしまいます。そこで採用したのが、宇宙船や潜水艇の二重エアロック・セキュリティシステムに用いられているような2組のガスケットです。時計の外縁に施された大きな低摩擦ガスケットは、サファイアクリスタルの窓からホコリが侵入するのを防ぐのに十分な気密性をもたらしています。ムーブメントの中心付近には、直径のより小さい防水ガスケットが、リューズの軸を取り囲むように装備されています。このサファイア製リューズのためだけに、合計8個のガスケットが用いられているのです。

ケースと外側に付けられている各部品の作りが複雑であるため、ケースと内部のムーブメントの完全性を保証するために合計19個ものガスケットが必要となります。HM11 アーキテクトに装備されているガスケットのうち最大のものは、Oリング構造で3次元形状を持ち、ケースとベゼルの間に配置されています。このガスケット1個のために特注で金型が鋳造されました。この大型ガスケットとその他18個のガスケットは目的に合わせた特別な設計が施されており、HM11という家を様々な要素から守り、安全性を確保する役割を果たし、2ATM(20m)の防水性能を実現しています。


Credits:Fabien Nissels

20世紀半ばから後半に建築された「泡の家」は、建築技術の進化によって可能になったもので、当時としてはあまりに奇抜で「そんなもので家が建てられるはずがない」と思われていた素材や方法を用いて建築されています。このことは、MB&FのオロロジカルマシンNº11 アーキテクトにも当てはまります。多くの場合、新しいものには、新しい方法が必要です。真の変化は、それまでとは異なる考え方から始まり、それまでとは異なる生き方をすることでその変化は持続するのです。

立体的で建築的なコンセプトやムーブメントの複雑さにもかかわらず、HM11のケースは直径わずか42mmという驚きのサイズを実現しています。ストラップの取り付け部分でもあるケースの脚部が曲線的な形状であるため、手首にしっくり馴染み、着け心地も快適です。この脚のおかげで、様々なサイズの手首にフィットし、ゼンマイを巻き上げるためにケースを回転させる時の安定性も確保されています。


HM11のエンジン
物理的にも概念的にも、HM11 アーキテクトのエンジンで重視されているのは「パワーと効率」です。

機械式時計において、香箱はすべての動力の貯蔵庫であるが、その動力を生み出す源は、時計を装着している人の手首です。偶発的な動作(が自動巻き機構と連動して)または(リューズを使った)手動による巻き上げによって香箱にエネルギーが供給されます。HM11では、これら2つのエネルギー供給方法が採用されているため、時計の巻き上げは、(部屋の向きを変えた時に)偶発的に行われたり、意図的に行われたりすることになります。また、巻き上げの動作自体も増幅されています。すなわち、直径の小さいリューズを回す代わりに、時計自体を回すことになるため、1つの動作が時計に与えるパワーが大きくなります。

パワーリザーブ48時間の標準的な時計の場合、完全に巻き上げるにはリューズを20~30回転させる必要がありますが、HM11の場合、ケースを時計回りに10回転させるだけで、96時間駆動するパワーを蓄えることができるのです。

リューズのような直径の小さい部品ではなく、ケース自体を回転させる仕組みにより、巻き上げ機構にかけられるトルクの上限も引き上がります。これはシンプルな物理学です。回転する部品の直径を大きくすれば、それを回転させるのに必要なエネルギーを減らすことができます。つまり、HM11 アーキテクトの主ゼンマイをより直接的に、より速く巻き上げることができるのです。

HM11 アーキテクトの計時能力を制御するフライングトゥールビヨンは、MB&Fの機械的アイデンティティのカギとなる要素であり、オロロジカルマシン6および7とレガシー・マシン フライングTにも搭載されています。その大きなテン輪は、システム全体の慣性を高め、クロノメーターの安定性の面ではメリットをもたらしますが、トゥールビヨン(特にフライングトゥールビヨン)は衝撃に弱く、性能に支障をきたすおそれのある脆弱性もはらんでいます。時計に用いられる従来の耐衝撃ソリューションは、特定の部品、特に天真を保護するように設計されたものが一般的で、ムーブメント全体を保護する全般的な耐衝撃ソリューションはあまり見かけません。ところがHM11では、個々の部品に耐衝撃性能を追加するのではなく、システム全体への衝撃を緩めるダンパーが組み込まれています。これは、ムーブメントと下部ケースシェルの間に配された4つの高張力サスペンション・スプリングで構成されています。


Credits:Fabien Nissels

このサスペンションには、ワイヤーで作られた単純なコイルスプリングではなく、低炭素・高硬度のスティール製チューブからレーザーで切り出され、クロム仕上げされたカスタム仕様のスプリングが用いられています。このスティール特有の合金組成と結晶構造が、優れた耐摩耗性を実現しており、スプリングは表からは見えませんが、その仕上げと円筒形のフォルムは見た目も美しく、審美的価値をもたらしています。これは、オーデマピゲスーパーコピー 代引きN級品航空宇宙産業向けの技術を応用して作られたものであり、時計業界でこのようなスプリングを使用しているのは、MB&Fをおいて他にありません。


Credits:Fabien Nissels

現代の時計製造においては、他の産業から新技術を取り入れるのは珍しいことではありませんが、逆にあえて古い技術を取り入れるというのは稀です。HM11 アーキテクトに搭載された機械式温度計には、異素材間の熱膨張係数の違いを利用した、何世紀にもわたって受け継がれてきた昔ながらの原理が採用されています。とはいえ、時計に温度計を装備するというのは、斬新で突飛な発想でしょう。細いらせん状に成形したバイメタルストリップ(2枚の異なる金属の板を貼り合わせたもの)にラックとレバーが取り付けられ、そのストリップの伸縮によってラックが回転して角度が変わり、レバーが動き、そのレバーが温度を示す針の動きを制御するという仕組みです。従来のバイメタルストリップの素材はラミネート加工された銅とスティールでしたが、現代の機械式温度計のメーカー各社は、それぞれ独自の合金を用いて計器の精度と信頼性を向上させています。HM11の機械式温度計で測定できる温度は、-20~60°C(0~140°F)で、最も一般的な温度単位(摂氏と華氏)を示す2つのバージョンがあります。