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イヴ・サンローランの2025年秋コスメとして、新作リッププランパー「YSL ラブシャイン グロスプランパー」が登場。

“ぷっくり”ツヤ唇を叶える新リッププランパー
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」全10色 各4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」全10色 各4,950円<新製品>
イヴ・サンローランのアイコンリップシリーズ「YSL ラブシャイン」から初のリッププランパーが、2025年秋デビュー。まるでゼリーのようなツヤ感と“ぷっくり”感で、自分史上No.1のボリュームリップを叶えてくれるはず。

「YSL ラブシャイン グロスプランパー」全10色 各4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」全10色 各4,950円<新製品>
クロムハーツスーパーコピー代引きキーとなるのは、イヴ・サンローラン初配合のジンジャーオイル(※1)。ジンジャーの温かい刺激が唇に“じゅわっと”広がり、プランプアップした仕上がりとナチュラルな血色感を叶える。

イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent) YSL ラブシャイン|写真20
またオイルを贅沢に95%配合しており、なめらかなツヤ膜でリップ全体を包み込んでくれるのも魅力だ。カラーは全10色。

人気No.1は星屑ラメのラベンダー?
イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent) YSL ラブシャイン|写真13
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」のスターシェードとなるのは、ラメ入りラベンダーの「No.1 サンダー スティーラー」。クールトーンのラメがぎっしり詰まった寒色リップで、星のようなきらめきを楽しめる。YSL ジャパンアンバサダーのTWICE SANAもお気に入りのカラーで、「唇にのせたときと時間が経ったときの色の変化が楽しい」とコメントしている。

「YSL ラブシャイン グロスプランパー」全色スウォッチ
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」全10色 各4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」全10色 各4,950円<新製品>
カラー展開
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」1 4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」No.1 4,950円<新製品>
#1 サンダー スティーラー:光と視線を奪いつくす煌めく、ソフトなラベンダーシェード(ラメ入り)

「YSL ラブシャイン グロスプランパー」2 4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」No.2 4,950円<新製品>
#2 ラッキー ムーンストーン:自分らしい透明感と多幸感を引き込む血色ピンク(微細パール入り)

「YSL ラブシャイン グロスプランパー」3 4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」No.3 4,950円<新製品>
#3 メロウ マロウ:ふんわりと包み込む、柔らかなキャンディピンク

#4 ハニー ピュア ラブ:センシュアルでリッチな、深みのあるハニーブラウン

「YSL ラブシャイン グロスプランパー」5 4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」No.5 4,950円<新製品>
#5 カリフォルニア サンシャイン:ヘルシーに染め上げるオレンジウォームブラウン(ラメ入り)

「YSL ラブシャイン グロスプランパー」6 4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」No.6 4,950円<新製品>
#6 エスプレッソ スターダスト:モードに煌めくスターダストブラウン(ラメ入り)

「YSL ラブシャイン グロスプランパー」7 4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」No.7 4,950円<新製品>
#7 ストロベリー スター:甘酸っぱい誘惑のストロベリーレッド

「YSL ラブシャイン グロスプランパー」8 4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」No.8 4,950円<新製品>
#8 パープル ドリーム:クールで魅惑的なディープパープル

「YSL ラブシャイン グロスプランパー」9 4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」No.9 4,950円<新製品>
#9 チェリー フラッシュ:情熱的で鮮やかなチェリーレッド

「YSL ラブシャイン グロスプランパー」10 4,950円<新製品>
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」No.10 4,950円<新製品>
#44 ヌード ラヴァリエール:フレンチモードなミルキーピンク

イベント「YSL ビューティ ラブゲーム」表参道ヒルズで開催
イヴ・サンローラン「YSL ラブシャイン」初のリッププランパー25年秋誕生、“ぷっくり”ゼリーツヤ唇 | 写真
「YSL ラブシャイン グロスプランパー」は、東京・表参道ヒルズで開催のイベント「YSL ビューティ ラブゲーム」にて先行公開。いち早く新作リップをトライできるほか、リップ診断、プリクラ撮影なども無料で体験できる。思わず写真に収めたくなるハートのフォトスポットも盛りだくさんだ。

SEIKOブランド100周年の幕開けにふさわしい1本だ。

SEIKOの名を初めて冠した腕時計にオマージュを捧げる限定モデルが登場。

セイコーウォッチはこれを“SEIKOブランド100周年”として、数々のSEIKOブランド100周年記念モデルを発表するようだ。セイコー プレザージュから発表された本作は、まさに初めてSEIKOの名を冠して製作した腕時計にオマージュを捧げ、当時のデザインを再現した特別な限定モデルとなっている。

「SEIKO」の商標を初めて使用した腕時計(1924年)

スーパーコピー時計代引き 激安やはり真っ先に注目すべきは忠実に再現されたダイヤルだろう。12時位置にあしらわれた「SEIKO」ロゴは、当時の書体をわざわざ復刻したもの。たっぷり墨を含ませた筆で描いたようなアラビア数字や、デコラティブなカテドラル形状の針は、オリジナルのデザインを継承している。また、6時位置にインダイヤルを配置した新開発の自動巻きCal.6R5Hを採用することで、オリジナルに近いダイヤルレイアウトを実現した。

忠実なのはデザインやレイアウトだけではない。オリジナルモデルにも使われていた琺瑯(ほうろう)ダイヤルを本作でも使用している。製作したのは、現代の琺瑯職人のひとりである横澤 満氏。横澤氏はこれまでにもセイコー プレザージュの琺瑯(ほうろう)ダイヤルモデルを手がけてきたベテラン職人だ。氏の技によって1枚1枚作られ、琺瑯ならではの艶やかな光沢と温かみのある質感を持ったダイヤルに仕上げられている。

ケースは懐中時計を思わせる丸みを帯びた形状で、風防にはボックス型のサファイアガラスを採用することでクラシックな雰囲気が表現されている。大きなリューズもオリジナルを色濃く受け継いでいるディテールだ。なお、裏蓋とリューズトップには、商標である「丸角Sマーク」をデザイン。裏蓋のマークの周囲にはセイコー創業者である服部金太郎が掲げた信条“常に時代の1歩先を行く”を英語で表した“ONE STEP AHEAD OF THE REST”の文字と“KINTARO HATTORI”の文字もあしらう。

オリジナルでは、元々懐中時計を転用したケースにストラップを通すためのラグが後付けされていたが、本作ではその雰囲気は感じさせつつも、時計本体とストラップを可動式パーツで接合。現代の品質基準をクリアしながらも、当時多く見られた可動式構造を伴う引き通しストラップを採用した。シボ革のストラップには、国際認証団体(※LWG)認証を受けたタンナーが供給するサステナブルなカーフレザーを使用。写真がないのが残念だが、尾錠とストラップの裏側にもSEIKOSロゴが刻印されている。

※ LWG(Leather Working Group)とは、持続可能なレザー生産を目指し、品質や安全性、環境問題等の啓蒙活動を行う非営利組織。

オリジナルをほうふつとさせるこのSEIKOブランド100周年記念<セイコー プレザージュ>服部金太郎 限定モデルには、服部金太郎が1900年に登録したセイコーの前身である服部時計店の商標「丸角Sマーク」を立体的にかたどった特製ピンバッジも付属。これらを復刻ロゴが印象的なスペシャルボックスに収める。価格は25万3000 円(税込)。世界限定1000本(うち300本は国内限定)のリミテッドエディションで、発売時期はSEIKOブランド100周年を迎える2024年の1月12日(金)を予定している。

ファースト・インプレッション

今に始まったことではないが、セイコーでは“〇〇周年”を謳って発売されるモデルが多い。そのため、“あれ? この周年モデルって前も出ていなかったっけ?”と思うことがよくある。セイコーは今年、セイコーの腕時計110周年を記念して、国産初の腕時計「ローレル」のデザインをオマージュした限定モデルを発売していたため、それと混同してしまったのだが、改めて強調しておくと、今回登場したのは“SEIKOブランドが誕生してから100周年”を記念したモデルだ。

まず最初にこの時計を見て驚かされたのは、その高い再現度だ。つい先日、2023年に発表された新作を一堂に見せてもらう機会があったのだが、“オリジナルがなぜここに?”と思ってしまうほど、ディテールへのこだわりは高い。それはオリジナルの写真と見比べて見れば一目瞭然だろう。なかでも特に驚いたのは、そのサイズ感だった。本作の35mm(ラグトゥラグは37mm)と非常に小ぶりなのだ。オリジナルは30mmを切る28mmほどの大きさだが、小振りな機械式ムーブメントがほとんど作られていない現在のセイコーにあって、このサイズ感の時計に仕立てるという選択をしたところには製作陣の意気込みが感じられる。

ただし、単純な復刻版ではないというところから察するに、本作は単なるマニア向けの製品ではなく、今後の展開も見据えた製品なのだろう。

マニアであれば、6時位置のインダイヤルはオリジナルと同様、スモールセコンドであって欲しい思うのではないだろうか? だが、本作で提供されるのは、あくまでも“オリジナルに近いレイアウト”であって機能ではない。6時位置のインダイヤルにあるのは、スモールセコンドではなく24時間表示なのだ。中3針に24時間表示という組み合わせは、セイコー プレザージュでは以前から見られたもの。スペックから推測する限り、新開発の自動巻きCal.6R5Hは以前から使用されているCal.6R5Jをベースにしていると思われる。サイズこそ違うが、機能はどちらもほぼ同じだ。ムーヴメント開発には資金が必要になる。需要の大半がマニアとなるであろうニッチなスモールセコンドではなく、さまざま製品としてアレンジしやすい中3針に24時間表示という選択は、メーカーとしては当然と言える。

ムーブメントこそ使い勝手のいいマス向け仕様だが、オリジナルをオマージュしたデザインやディテールは、決して多くの人が手を取るような一般的なものではないだろう。特に時計本体とストラップを可動式パーツで接合した引き通しストラップのスタイルは、サイズは小振りながらも、つけてみると意外に主張が強く、決してどんな装いにもマッチするといった類のものではない。一方で本作は、時計としてのつけ心地やバランスは担保しつつも、存在感があり、人の目と引きつけるところが大きな魅力だ。それゆえ、日常的に使うというよりも、何か特別なタイミングやシーンで話題を提供したり、意図的に非日常を演出するのにふさわしい時計なのだと筆者は思っている。

基本情報
ブランド: セイコー プレザージュ(Seiko Presage)
モデル名: SEIKOブランド100周年記念<セイコー プレザージュ>服部金太郎 限定モデル(Seiko Brand 100th Anniversary Seiko Presage Kintaro Hattori Limited Edition)
型番:SART001

直径: 35mm(ラグトゥラグは37mm)
厚さ: 12.3mm
ケース素材: ステンレススティール(ダイヤシールド加工)
文字盤色: 琺瑯(ほうろう)
インデックス: アラビア数字
夜光: なし
防水性能: 5気圧(日常生活用強化防水)
ストラップ/ブレスレット: 引き通し式カーフストラップ、 SS製美錠

ムーブメント情報
キャリバー: 6R5H
機能: 時・分表示、センターセコンド、6時位置に24時間表示
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻つき)
振動数: 2万1600振動/時
石数: 24
精度: 日差+25秒~−15秒(気温5℃~ 35℃において腕につけた場合)
追加情報: 秒針停止機能

価格 & 発売時期
価格: 25万3000 円(税込)

MB&Fのデザインのなかでもとりわけ魅力的なもののひとつである。

MB&FがHM11 “アーキテクト”をドバイ・ウォッチ・ウィークの前日に発表するという選択には、何か詩情的なものを感じる。この時計は逆説的ではあるものの、最近のブッサーのオロロジカル・マシンに見られる(こんなことは言いたくないが)予測の範疇を出ないクルマ的なデザインから、遠く離れたところにあるように見える。これは、ブランドが私に言ったように“手首のための家”なのだ。

別に、MB&Fの時計が一般的に巨大なサイズであることを評しているのではない。HM11のサイズは直径42mmで(それでもかなり大きい)厚さ23mmと、比較的小さい。また、HM11の19万8000スイスフラン(日本円で約3355万円)という価格を非難しているのでもない。MB&Fのオロロジカル・マシンのほとんどは、まるでほかの“モノ”のような外観をしている(その多くはクルマだが、なかには意図せず……、そう、ナスの絵文字のようなものもある)。今回の時計は、スーパーコピー時計 優良サイトモダニズムと有機的建築の哲学を取り入れた1960年代と1970年代の近未来的建築からインスピレーションを得ている。

MB&F HM-11 "The Architect"
マッティ・スーロネン(Matti Suuronen)が1970年にグラスファイバー強化プラスチックでデザインした住宅、フトゥロは、MB&FのHMに対してしばしば目にするのと同じような反感(または信じられないというような反応)を受けた。インフレ調整後のフトゥロの価格は約10万5000ドルであった。その外観は、アンティ・ロヴァーグ(Antti Lovag)の“パレ ビュル”(水まわり設備なし)とチャールズ・ハートリング(Charles Haertling)の“ブレントンハウス”を足したような感じだ。ブッサーは実際のところ、妻はこれらの建物に住みたがらないだろうが自分は住んでみたいと認めている。ブッサーに“これはいい時計になりそうだ”と思わせたのは、“ブレントンハウス”に関するInstagramの投稿だった。

上記のどの建物もそうであるように、どのHMも(HM5やHM8 Mark 2を除いて)自分のためにあると感じたことはない。しかし、少なくともそれらを解釈し、魅力を理解するために最善を尽くしている。

Charles Haertling Brenton House
チャールズ・ハートリングの “ブレントンハウス”。

1960年代と1970年代を振り返ってみると、当時の建築家たちはしばしば伝統的なデザイン言語からの脱却を常に試みていた。伝統的なデザインは大衆にとって快適で親しみやすいものであったものの、近代的な建築技術、資材、工学的知見の活用による発展が難しかったのだ。このように聞くと、こうした建築家たちの努力と近代化デザインへのアプローチが、(意外にも)長年にわたってブッサー魅了してきたことに驚きはないだろう。不可能に近い形状のサファイアクリスタルや加工が難しいチタンなど、ブッサーのチームが乗り越えなければならなかったのと同じ課題が、そこにもおしなべて登場する。そして、デザインリーダーであるエリック・ジロー(Eric Giroud)は、これまでのように自動車業界に目を向けるのではなく、建築のバックグラウンドをHM11のレイアウトに反映させた。

ブッサーとジローは、HM11を4つの部屋を持つ家として構想した。それはモンサントの“ハウス・オブ・フューチャー”のようなもので、中央のエリアとそこから枝分かれした快適なスペースを備えている。HM11の中央の空間には、ダブルドーム型サファイアガラスの下に、1分間で逆回転するセンターフライングトゥールビヨンが配置されている。この時計は2色展開で、ひとつはPVD加工を施した“オゾンブルー”の地板を、もうひとつは5Nゴールド製の地板を使用したもので、それぞれ25本ずつが用意される。しかし、こうした華やかな要素もさることながら、本当のパーティはHM11ハウスのサイドルームで開催されている。

MB&F HM-11 "The Architect"
実用面の話をすると、HM11はHM3以降のすべてのオロロジカル・マシンと同様に、手首に斜めに装着して時間を読み取ることになる。そう考えると、これはMB&Fがこれまで製造してきた時計のなかでもっとも読みにくい時計と言えるかもしれない。私は幸運にも視力が1.0であるため、変わったダイヤルの色や針の組み合わせ、あるいはカルティエのタンク ア ギシェのような奇妙な表示であっても、視認性についてとやかく言うことはない。実際、この手のレビューでは“木を見て森を見ず”という状況に陥り、苦労することが多い。しかし、いずれにしても(そして今回も)、これらが実用的な時計というよりは、その名が明示しているように手首のための彫塑的な機械式時計であるということが重要になってくる。視認性と実用性を求めるなら、MB&Fの“レガシー・マシン”のラインナップから好きなものを選べばいい。レガシー・マシンでさえも市場で特別視認性に優れた時計とは言えないが、いずれにせよあなたが求めるものはHMではないだろう。

MB&F HM-11 "The Architect"
この場合あなたが実際に購入することになるのは、1960年代から1970年代の偉大なデザイナーたちに向けた素晴らしいオマージュであり、全体的にポッドのようなデザインをさらに推し進めた意匠である。その証拠に、4つの部屋のうちひとつ目の部屋には、先端が赤い2本の白いアロー針が付いた小さなディスプレイが見える。しかもその針は0.6mmほどとかなり小さい。針はディスプレイの中央から放射状に伸びる短いロッド上の金属球を指しており、15分間隔ではシルバー色、それ以外の5分間隔では真鍮色となっている。その計時はアメリカの工業デザイナー、ジョージ・ネルソン(George Nelson)が手がけたボール クロック “Horloge Vitra”からインスピレーションを得たものだ。このデザインは私の記憶に深く刻み込まれており、HM11を見るまで誰の作品かを考えたこともなかった。そのすべてが高さ約11.45mmの窓のなかに収められているのだから、はっきり言って時計のフェイスとしてはそれほど大きなものではない。

MB&F HM-11 "The Architect"
Horloge Vitra George Nelson
“ボール クロック”。courtesy Vitra.

トゥールビヨンムーブメントの水平面からこの時計(そしてこれから紹介するほかの部屋)のような垂直ディスプレイに動力を変換する方法として、このブランドは円錐状の歯車を採用し続けている。この時計のそれは私が覚えているどのHMよりも際立っており、MB&Fの時計をここまで魅力的なものにしている創意工夫を知るにはうってつけのモデルとなっている。

ほとんどの現代建築プロジェクトと同様に、この時計でもエネルギー効率がキーとなってくるのだが、HM11は2種類の方法でそれを実現した。ひとつは2部屋目にある。そこにはパワーリザーブに相当するような表示があり、ゼンマイに蓄えられた96時間の動力をカウントダウンする。

MB&F HM-11 "The Architect"
ひとつ目の部屋からふたつ目の部屋を見に行くのに、体を無理にねじる必要はない。それどころかこの時計は、直感的に、簡単にひねるだけで中心軸を中心に一方向に回転する。45度または90度ごとに位置が固定されるため、勝手に回ってしまうことはない。実際、45度だけ回転させれば、“ドライバーズ”ウォッチのようにより見やすくなる。これらすべてが長いラグを備える軽量なチタン製フレームに支えられている。

MB&F HM-11 "The Architect"
3つ目の部屋は昨今あまり目にしない斬新なもので、摂氏と華氏のどちらかを選べる温度計となっている。事実、この時計は温度計を備えた数少ない近代的な機械式時計のひとつだ。この種の複雑機構はかつてポケットウォッチにも搭載されていたが(例えば、ユール・ヤーゲンセン作のものをいくつか見た記憶がある)、現代の市場ではボール社のものしか思いつかない。そのような時計は、着用者が一定時間手首から時計を離さなければ、体温が温度計の機能に影響を及ぼしてしまう。つまり、1日中体温を計測し続けることになるのだ。だが、この新しいHM11にはそのような問題はない。

MB&F HM-11 "The Architect"
温度計のデザインにMB&Fの熟練した時計製造技術が用いられているという理由だけでも、(あまり役に立たないかもしれないが)かなりスマートな機構である。この時計はバネ式温度計を採用しており、コイル状の金属は温度が上がると膨張し、下がると収縮する。時計職人が学んできたヒゲゼンマイの加工技術が、どうやら温度計の調整にも応用されているようだ。

最後の“部屋”は、通常の時計であれば3時位置にある(この時計が時刻を見るためにセットされている場合、少なくとも)。この部屋にあるのは別の機能ではなく、時間設定用の透明なクリスタル製リューズで、ブランドはこの部屋を時計の玄関と呼んでいる。そこはリューズを載せるにふさわしい場所だが、当然ながらこれは普通のリューズはない。

通常のリューズには2mmのガスケットが必要だが、このリューズはサイズが大きいために若干の見直しが必要だった。その結果、2組のガスケットにより一種のダブルエアロックのようになっており、合計8個のガスケットがリューズに使用されている(時計の内部には19個使用されている)。これにより20mの防水性を実現した。しかし、リューズのサイズが問題を引き起こした。時計の初期設計ではリューズを引き出そうとすると、ドーム型クリスタル内のわずかな空気の真空圧によって即座に吸い戻されてしまうのだ。その解決策としてリューズの容積を大きくすることで、引き出したときのわずかな容積変化の影響を緩和したのである。ほとんどのブランドが時計の薄型化に取り組んでいるなかでおかしなことではあるが、これはスマートで必要な選択で あった。

MB&F HM-11 "The Architect"
この時計をつけていて気づいたことのひとつは、リューズが実際にムーブメントを巻き上げるわけではないということだ。しかし、これは手巻き時計である。エネルギー効率こそが鍵であることは前述したが、“家”が土台の上で回転するという事実は、単なるお遊びや余興ではない。時計回りに45度回転するたびに、カチッと音がするだけでなく、香箱に直接72分間の動力が供給される。10回ほど回転させると、HM11 のパワーは最大になる。

ジュネーブで過ごした時間(の一部)を、非公式な日記として少し紹介しようと思う。

日曜日: マンダリン オリエンタルでオークション&ウォッチトーク

今週ジュネーブで過ごした私の腕には? ロレックス コスモグラフ デイトナ 126529LN “ル・マン”が巻かれている。

午前9時頃、ジュネーブに到着した私はホテルへと向かい、チェックインを終え、シャワーを浴びて身支度を整えた。その日曜日、私が特に見たいと思っていた数点を、サザビーズが出品していたのだ。当初気づかなかったが、オークションのためにマンダリンまで足を運んだことで、何年も会っていなかったコレクターコミュニティの中枢へと足を踏み入れることになる。マンダリンのメインエントランスからバーまでのわずか15フィート(約4.5m)のあいだに、マイケル・サフディ(Michael Safdie)、ロレックススーパーコピー時計ダビデ・パルメジャーニ(Davide Parmegiani)、そして友人のウェンディとアモス(ふたりはシンガポールにいる素晴らしいランゲコレクターだ)と出会った。

彼らに挨拶をしたのちセキュリティーを通過すると、唯一無二の存在であるクロード・スフェール(Claude Sfeir)がいた。クロードは伝説的なコレクターで、オークション界の中心人物である。彼は体調を崩したり、その前にはCOVIDが集まりを妨害していたため、お互いに会うのは何年かぶりだったが、彼は相変わらずとても親切で思いやりのあるコレクターだった。クロードと十分に挨拶を交わしたあと、私はオークション会場に向かった。すると会場の奥にいたロジャー・スミス(Roger Smith)を見つけた。彼が手掛けるプラチナ製のダニエルズアニバーサリーウォッチが、この後のオークションに出品される予定だったのだ。ロジャーは私の大好きな時計関係者のひとりなので、私は彼のところに行ってみた。すると彼は、何か違うものを身につけていることに気づく。プラチナ製のランゲ ダトグラフのファーストシリーズだ! これが“ダトー”(貴族に相当する称号)のお墨付きでなくて何なのか。

アニバーサリーウォッチセールの前にまだいくつかのロットが残っていたので、我々はロビーのバーにあるテーブルを囲んだ。そのグループにはロジャー、クロード・スフェール、私、ハムダン・ビン・ハマド(Hamdan Bin Humaid)というとても素敵な男性(私はすぐに、ネットで見た中東の独立時計に関する素晴らしいプロジェクトの仕掛け人だと気づいた)、偉大なアメリカ人コレクターのマイク・S、HODINKEEのマライカ・クロフォード、そしてときにほかの数人がいた。テーブルを囲んだ時計をいくつか紹介しよう。

そう、こんな感じだった。しばらくしてから我々は皆、ロジャーの時計を見るためにオークションルームに戻った。これもまた、彼が2008年に工房設立のために売却した私物の時計だった。このロットは極端なスタイルで行われた。スフェールを含む4人の入札者と2人の電話入札者(そのうちのひとりはアメリカからのものと思われる)により、210万スイスフラン(日本円で約3億5580万円)以上で落札されたのだ。ほんの数年前ならむしろ誤解していたであろう時計にとっては、信じられない結果だと思う。

オークションのあと、何人かはロビーのバーに戻って昼食をとり、数時間話し込んだ。とても楽しい人たちとの素敵なソフトランディングで週のスタートを切れたことをうれしく思う。

月曜日: ラート美術館にてGPHG審査員として投票

前述したように、ジュネーブ時計グランプリ(GPHG)は、“時計界のアカデミー賞”のようなものだ。10年前、私に初めて審査員の依頼が来た。それ以来状況は大きく変わったが、最終的にGPHGは、毎年完璧ではないにもかかわらず(すべてのトップブランドが参加するわけではない)、高級時計製造のための絶対的に優れた賞であり、非常に高い評価を得ている。私は審査員として、事前に選ばれた候補の時計が並んだ部屋に12時間近く座り、議論し、無数のカテゴリの勝者に投票した。世界の偉大な専門家たちに囲まれながら、すべての時計を手にして詳細に見られた素晴らしい日である。しかしGPHGを特別なものにしているのは、審査員の質だ。私の朝のテーブルはマックス・ブッサー(Max Büsser)とヴィアネイ・ハルター(Vianney Halter)とモハメド・セディキ(Mohammed Seddiqi)だった。この3人は時計に詳しいと言えるだろう。

ヴィアネイ・ハルターが私の時計をチェックしている。

5つのカテゴリのあと、テーブルが入れ替わる。私の次のグループには、審査委員長のニコラス・フォルケス(Nick Foulkes)や、私が以前から会いたいと思っていた、東京に拠点を置く彼の名を冠したウォッチブランドを手掛ける飛田直哉がいた。情熱は言うに及ばず、その知識量には本当に感心させられた。ジョージ・バンフォード(George Bamford)、マーク・チョー(Mark Cho)、ダニエラ・デュフォー(Daniella Dufour)、クリスティアン・ハーゲン(Kristian Haagen)、Dimepieceのブリン(Brynn)など、昔からの友人たちにも会うことができた。ここでは、2023年のGPHGで候補に挙がっていたいくつかの時計を紹介しよう。

この日たくさんのことを考えていたが、12時間にもおよぶ審査はいつも驚きを与えてくれる。例えば、ジェブデ・レジェピ(Xvedet Rexhepi)の時計の美しさとか。今年の初めに完成予想図が公開されて以来、実機が見たくてたまらなかったこの時計は、想像していた以上に素敵だった。長いラグ(ある意味では、弟のレジェップがJPハグマンとともに製作したものに似ている)、細身の輪郭、そして考え抜かれた複雑機構は期待以上だ。しかし、これはまだ本来の機能を果たしていないプロトタイプだったため、今年のGPHGの投票では候補から外された。しかし、若いレジェピの未来は明るいと言えるし、この時計のために予約をした人たちは今後の展開に自信を持つべきだ。そして来年のGPHGで彼と再会できると確信している。

明るいパウダーブルーの文字盤は現代的だ。

リヤキャリバーはアンティークのように見える。私はこの組み合わせが大好きだ。

そのほかの感想としては、スタジオ・アンダードッグによるシーガル社製クロノグラフの解釈が素晴らしかったことだろうか。この非常に魅力的なレイモンド・ウェイル(同部門で優勝)もそう。私は至って真剣だ。下の写真は、この時計を正当に評価しているわけではないが、ケースと文字盤は非常によく考えられていて完成度が高く、チャレンジカテゴリでこの時計以外を考えるのは難しかった。

いいデザインだ。

そして素晴らしい出来栄えで、素晴らしい価値がある。

この実機を見れば、同ブランドに対する考え方は変わるだろう。

もうひとつの傑出した時計は、ペテルマン・ベダのスプリットセコンド クロノグラフだ。クロノグラフウォッチ部門を受賞したが当然の結果だろう。正直言って、この時計のケースや文字盤は好みではなかったのだが、とにかく素晴らしいムーブメントを載せていた。このふたりは若くて才能があり、今後も目が離せない。

この時計の文字盤、ケース、オーバーサイズのリューズは私の好みではなかった。

ただし、自社製のハンドメイドラトラパンテキャリバーは、まさにこの世のものとは思えないほどよかった。

事前に選ばれた時計の審査と投票が終わったあと、我々は昼食のために休憩をした。私は飛田直哉、マーク・チョー、ステファン・クドケ(Stefan Kudoke)、ヴィアネイ・ハルター、ピエトロ・トマジェ(Pietro Tomajer、The Limited Editionの共同創設者)、ドミニク・ルノー(Dominique Renaud)と同席し、話が尽きることはなかった。しかしここで交わされた会話は、審査員の知識が驚くほど豊富で視点も実に多様であり、GPHGがいかに特別なものであるかを再認識させてくれた。

マックスと私。

ジョージとニック。

ランチのあと我々はラート美術館に再び集まり、ある意味、何でもありで最も激しい争いが繰り広げられるカテゴリへと移った。ただこのエギュイユ・ドール(金の針)と呼ばれる最高賞は、個人投票ではどちらに転ぶかはわからなかったが最も決定しやすい賞だったかもしれない。私はAPのユニヴェルセル RD#4が受賞に値すると確信していたが、ここで言及されたほかの名前は、サイモン・ブレット(今最も話題の独立時計ブランドであり、その夜、権威ある時計界のレベレーション賞を受賞した)、ペテルマン・ベダ、そしてボヴェである。ただ私にとってのRD4は、真の芸術性、革新性、熟慮したデザイン、そして時計製造に関する優れた思考など、エギュイユ・ドールが象徴するすべてのものを備えていた。それに加えて、防水性、工具風用でセット可能であるだけでなく、自動巻きも可能というメガコンプリケーションを備えている。以下に簡単な画像を載せておく。

ウブロとの5作目は、村上氏にとってこれまでで最もコンセプチュアルなものになった。

ウブロは、日本人アーティストの村上 隆氏とのコラボレーションによる新しいサファイアMP(これはマスターピースの略。正直に言うと、この言葉を先週末に知ったばかりだ。私たちは日々学習している)を発表した。完全に透明な花の形をしていて、厳密にいうと文字盤はない。スマイルフェイスのなかに鎮座するフライングトゥールビヨンだけがあり、そこから小さな針が突き出ていて、目を凝らすとインデックスが見えるようになっている。この時点で、ウブロスーパーコピー時計この時計は時間を確認することが重要でないことは、誰もが理解したと思う。

Hublot MP 15
技術的なスペックを分析する前に、村上氏が時代の流れに与えた影響を考察してみよう。というのも、これほど活躍の場が広い人が、時計のデザインを手がけることはめったにないからだ。実際、スウォッチとG-SHOCKのライセンス契約を除いて、これは現存するアート × 時計のコラボレーションのなかで最もバリエーションが多いモデルだ。ほかに例があるだろうか? ぜひ私に挑戦してみて。

村上氏はコラボレーションに飛びつくのが好きなタイプのように見えるかもしれないが、彼は文字どおり現代ファッションのコラボレーションの祖だ。ヴァージル(・アブロー)が話題になるずっと前から、彼は一般消費者とファインアート、ハイファッション、ストリートウェアの橋渡しをしていた。

村上氏による“スーパーフラット”(ここで美術史の授業をする暇はない)なポップアートは、現代の視覚文化に浸透し、MoMaのギフトショップの枕にまでなった。これはマーク・ジェイコブス氏が村上氏に、ルイ・ヴィトンのミックスメディアプリント(マルチカラーのムラカミスピーディ万歳!)を依頼してからずっとあとのことである。カニエ・ウェストのアルバムアートから、2021年のメットガラでキッド・カディが身につけたベン・バラーのダイヤモンドセットチェーン、シュプリームのボックスロゴコラボレーションまで、村上氏はすべてを手がけてきた。彼の商業主義に対する本能を責めることはできないが、彼のアプローチはステッカー、枕、シャツから始まり、1500万ドル(日本円で約22億7580万円)もの彫刻に至るまで、ユニークで民主的なものだ。本当に、誰でも村上氏の作品を持ち帰ることができるのだ。

文字盤がない、いや、文字盤はあるがコンセプチュアルなものだ。時計の中央に配置される文字盤の代わりに、上部ブリッジのないフライングトゥールビヨンがデザインされている(ウブロで初めて連続生産されたセンターフライングトゥールビヨン)。そのトゥールビヨンは12枚の花びらで囲まれており、そのすべてが透明なサファイアでできているため、本質的にはスケルトンウォッチである。このMP-15は、輝度を最大限に引き出すためにサファイアケース、サファイアケースバック、サファイアリューズ、半透明の見返しリングおよびストラップを採用。村上氏は“モノクロだけど、色の制限はない”と言っていた。ポイントは、光が結晶をとおして屈折し、虹を作り出すという完璧なまでの透明度にある。

MP15 watch
このセンターフライングトゥールビヨンは約150時間のパワーリザーブを備えているが、これは純粋にタイプミスだと思っていた。ではこれはどうして実現したか? ウブロは巻き上げをサポートするために、充電可能なスタイラスを製作。これをリューズにセットすることで、センタートゥールビヨンを駆動する両方の香箱が完全に巻き上がるまでに100回転することを可能にしたのだ(普通の人間が指でこれだけの回転をかける労力は、想像に難くないだろう!)。

このクリアサファイアケースは50本の世界限定生産で、4367万円(税込)で販売される。

我々の考え
これを実際に見たことがあるのだが、完璧に近いと感じた。望むのであれば私やウブロを叩いてもいいが、今日も私は肯定的な意見にしがみつく。この時計は私のためのものではないが、私が時計のデザインに何度も求めているもの、つまり現代的なアプローチを満たしている。何でもかんでもヴィンテージの復刻版のようにはなりたくないのだ。いずれにしても、ウブロがそのためにあるのでないことは確かだ。

MP-15はセクシーなシルエットとポップな魅力を併せ持っている。これを達成するのは非常に難しいことだと認識しよう。徹底的にモダンだが、つけこなせる。それと同じように、私はしばしばRM(リシャール・ミル)にありがちな、時計デザインの枠を超えた発想を称賛している。それらは私たちに疑問を抱かせるほど先進的なのだ。私はウブロを熱心に崇拝しているわけではないが、RMが私を突き動かすのと同じように、自分が時計に何を求めているのかを問うようにウブロは問いかけてくる。私はいつも正統な華やかさを求めているわけではないし、すべてがクラシカルなデザインに包まれた複雑な過去へのオマージュである必要もない。伝統の重要性を誇張しすぎると、テクノロジーの皮肉の餌食になりやすいのだ。

パーペチュアルカレンダーは、スパイスのなかで最も愛されているバニラのように、美しく古典的でありながら最も退屈なものでもある。好みの二面性だ。どっちも好きでいい! またはどちらもナシか。どうすべきかは言えない。ここで私はAPのコンセプトモデルとスマイリーRMについて考えている。テクノロジーが物理的な領域への依存を減らしている今、これらのブランドが伝統的な時刻表示機能の外に出て行こうとしているのは偶然ではない。念のために言っておくが、私がこれを身につけるとは言わないが村上氏がこれをつけるのを想像してもいいし、リル・ウージーがこれを身につけるのを想像してもいいし、ファレル(・ウィリアムス)がこれを身につけるのを想像してもいい。どうかもう1度考えてみて欲しい。

Murakami wearing MP15
この時計は宇宙船には見えないし、現代的なデザインを満足させる必要もない。それは彫刻的であり、冗談のようであり、花の形をしているが、ほとんど無定形だ。透明だが、光が屈折する。いろいろなことが起きている。私は村上氏自身が、この作品を独立したものとして完全に受け止めている印象を受けた。いままでのコラボレーションのときよりもはるかに。

私からのアドバイスは、1歩下がって、感情の熱に飲み込まれすぎないようにすること。誰かが変革の担い手となって、十分に水を満たさなければならないのだ!

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基本情報
ブランド: ウブロ(Hublot)
モデル名: MP-15 タカシムラカミ トゥールビヨン サファイア(MP-15 Takashi Murakami Tourbillon Sapphire)
型番: 915.JX.4802.RT

直径: 42mm
厚さ: 13.4mm
ケース素材: ポリッシュ仕上げのサファイアクリスタル
文字盤: ポリッシュ仕上げの透明コンポジットレジン
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: 装飾付き透明ラバーストラップ、サファイアクリスタルとチタニウム製フォールディングバックル

ムーブメント情報
キャリバー: HUB9015
機能: 時・分、フライングトゥールビヨン
パワーリザーブ: 約150時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 25

価格 & 発売時期
価格: 4367万円(税込)
発売時期: ウブロブティックで販売
限定: あり、世界限定50本

日本における国産初のダイバーズウォッチは、1965年にセイコーがリリースしたものだ。

150mの防水性能を備えたその時計は、1966年から4回にわたって南極地域観測隊の装備品として寄贈され、以降は多くの冒険家、探検家の手首の上で過酷な環境を渡り歩いてきた。その後もセイコーはダイバーズウォッチへの注力を続け、1970年の通称“植村ダイバー”、1978年の世界初クォーツ式飽和潜水仕様の600m防水ダイバーズなどが続き、1990年にはダイブコンピューター内蔵のモデルも登場し、海上自衛隊による1992年の掃海部隊のペルシャ湾での機雷掃海に使用された。

ロレックススーパーコピー 代引きしかし2000年代以降は、スプリングドライブの搭載やセイコースポーツの頂点となるLXライン化もあり、セイコーダイバーズはリアルなプロツールというよりも時計愛好家に愛される存在になっていく。そして2017年、時計業界が復刻ブームに湧くなかで発表されたファーストダイバーズの復刻モデルであるSBDX019が爆発的なヒットを飛ばし、セイコーダイバーズ、特に1965 メカニカルダイバーズ復刻デザイン、1965 メカニカルダイバーズ 現代デザインにラインナップされるモデルは熱い注目を浴びるようになった。

今回レギュラーモデルとしてリリースされたSBEN007も、1965 メカニカルダイバーズ 現代デザインに連なる1本である。太さの異なる直線を組み合わせることで、打ち寄せる波をダイヤル上で幾何学的に表現した新作だ。ほかの1965 メカニカルダイバーズ 現代デザインの例に漏れず、ずんぐりとした角型インデックスに、短めの貫通ラグ、ボックス型のガラス(オリジナルはアクリスガラス)とオリジナルのデザインコードはしっかりと踏襲されている。

だが、SBEN007はセイコーダイバーズのなかでも外装の造形や仕上げにこだわった新ライン「マリンマスター」に属するモデルだ。よくよく比較を行うと、逆回転防止ベゼルの刻みは深く立体的になっており、ケースには鏡面とヘアラインによる磨き分けが施されていることがわかる。ブレスも従来の3連から中ゴマを3分割した5連に変更され、コマの裏表両面を曲面とすることでしなやかな着用感と高級感を生み出している。

ムーブメントには2023年8月発売のSBEN003にも搭載されていたCal.6L37を搭載した。これはダイバーズウォッチ用にセイコーが開発した、薄型かつ高い耐衝撃性を有するムーブメントだ。2万8800振動/時で駆動し、45時間のパワーリザーブを備えている。

そして驚くべきことに、今作では同ムーブメントの姿をシースルーバックから確認することができる。セイコーダイバーズの象徴である波のロゴはガラスの表面にプリントで施され、その背後には美しい波状の筋模様が施されたCal.6L37の姿が見える。従来のセイコーダイバーズはソリッドバックが基本だったが、これもまた“見るたびの高揚”や“所有することの喜び”を追求しているというマリンマスターゆえのディテールかもしれない。

同タイミングで、セイコーブランドの100周年を記念した同型色違いの限定モデルも登場する。レギュラーモデルのSBEN007がライトブルーのダイヤルにブルーのベゼル表示板を組み合わせていたのに対し、限定モデルであるSBEN005はシルバーホワイトダイヤルにシルバーベゼルをセットしている。色数が減った分、こちらのほうがケースやベゼル、ダイヤルの造形が際立っている印象だ。

価格はSBEN005、SBEN007ともに変わらず、42万9000円(税込)で設定されている。防水性能は200mで、サイズはともに直径39.5mm、厚さは12.3mmだ。今年の12月8日(金)にセイコーフラッグシップサロン、セイコードリームスクエア、セイコーオンラインストアおよびセイコーブティックにて先行発売され、2024年の1月12日(金)にセイコーウオッチサロンで取り扱いが開始される。

ファースト・インプレッション
これまでセイコー プロスペックスのダイバーズカテゴリは、ダイバーズウォッチとしての技術の粋を集めたマリンマスター プロフェッショナル、機能性と日常使いのバランスが取れたダイバースキューバ(そして一部LXライン)に分類されてきた。どちらもダイバーズとして実用的で、ツールウォッチとしての印象が強いものだったが、SBEN005、SBEN007が属するマリンマスターではそこに美観が重要なファクターとして加えられている。

ケース側面からラグの先端まで施された面取りは既存モデルよりカットが深く、鏡面が強調されたことで洗練された印象を受ける。また、秒針の先の夜光部分が通常よりやや細く長くなり、時分針のカウンターウェイト(インデックスを指し示している側とは反対、といえば伝わるだろうか)がなくなったことで、全体としてシャープに見えるような調整がなされた。多連構造になったブレスやシースルーバックの採用もあり、セイコーダイバーズの持つ無骨なツール感が抑えられ、鑑賞を目的とする高級機然とした華やかさがプラスされている。これまでのセイコー プロスペックスとは、アプローチの方向が明確に変わったように思う。

最初にマリンマスターをリリースで目にしたときは4時半位置のデイト窓に違和感があったものだが、そもそものコンセプトから異なるというなら納得もいく。小さな丸窓になったことで日付の判読性は落ちたが、その分ダイヤル全体で端正にまとまった。特にSBEN005(限定モデル)はダイヤルの色が日付のディスクに近いため、デイトの小型化は一層効果的だ。ぱっと見では、そこにあることすら気がつかないかもしれない。そういった意味では、SBEN005の方がマリンマスターの狙いをより強く体現していると言えるだろう。

ケース、ブレスと手の込んだ作りになっているにも関わらず、同じムーブメントを搭載したSBEN003と大きく価格が変わらないというのは、個人的にありがたい(しかもSBEN003はシリコンバンドだ)。同じプライスレンジで、オリジナルのツール感を忠実に再現した1965 メカニカルダイバーズ復刻デザインと、マリンマスターとしてエレガントにリデザインされた1965 メカニカルダイバーズ 現代デザインを比較、検討することができるのだ。同じ時計を原点に持ちながらも従来とはまったく異なる方向性を示したSBEN007、SBEN005は、まもなく60周年を迎えるセイコーダイバーズの新たな可能性を切り拓くものだ。機会があればぜひ直接手首に乗せて、その印象の違いを確認したい。

基本情報
ブランド: セイコー プロスペックス(Seiko Prospex)
モデル名: マリンマスター 1965 メカニカルダイバーズ 現代デザイン
型番: SBEN007、SBEN005(限定モデル)

直径: 39.5mm(ラグトゥラグは47.2mm)
厚さ: 12.3mm
ケース素材: ステンレススティール(ダイヤシールド)
文字盤色: ライトブルー(SBEN007)、シルバーホワイト(SBEN005)
インデックス: バーインデックス
夜光: ルミブライト(針、インデックス、ベゼル)
防水性能: 200m空気潜水用防水
ストラップ/ブレスレット: ワンプッシュダイバーエクステンダー搭載ステンレススティール製ブレスレット
追加情報: 逆回転防止ベゼル、ネジロック式リューズ、シースルースクリューバック、内面無反射コーティング付きボックス型サファイアガラス

ムーブメント情報
キャリバー: 6L37
機能: 時・分・秒表示、デイト表示
パワーリザーブ: 最大巻上時約45時間
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻き付き)
振動数: 2万8800振動/時
石数: 26

価格 & 発売時期
価格: 42万9000円(税込)
発売時期: 2023年12月8日(金)セイコーフラッグシップサロン、セイコードリームスクエア、セイコーオンラインストアおよびセイコーブティックにて先行発売、1月12日(金)セイコーウオッチサロンにて発売
限定: SBEN005のみ世界限定1000本(うち国内200本)

ショパールからL.U.C ストライク ワンが登場

18Kゴールド製の25本限定記念モデルに夢中になっている。

ここ数年、ショパールはアルパイン イーグルをとおして、製品の構成を効果的に変化させてきた。この独立系ブランドは、古くからある名品を現代の消費者のために再形成したのである。L.U.Cラインにおけるムーブメント製造の観点から見ると、ショパールの異常なまでの仕事ぶりを見逃してしまうほどアルパイン イーグルは短期間で大きく成長した(その一部はアルパイン イーグルにも反映されている。こちらを参照)。アルパイン イーグルのファンである私は、全体的に薄いドレスウォッチのデザインから、オフィサーケースバックや文字盤の質感など、L.U.Cの製品にいつも驚かされる。これらの時計は、スーパーコピー時計最高の時計と肩を並べるにふさわしい。

ショパール L.U.C ストライク ワン
そして今年、ショパールはドバイウォッチウィークにて、L.U.Cコレクションから18Kホワイトゴールド製のL.U.C ストライク ワンを発表した。この25本限定モデルは、ショパールが特許を取得したモノブロックサファイアの上で、毎正時チャイムを鳴らす時計である。40mmのケースには、ショパールのエシカルな18KWG素材を採用。リューズ一体型のプッシャーを備え、厚さはなんと9.86mmという驚異的な数字を実現した。

内部には2万8800振動/時で時を刻むL.U.C 96.32-Lを搭載し、パワーリザーブは約65時間を確保。ストライク ワンはクロノメーター認定を受けているほか、ジュネーブ・シールも取得している。そしてこのムーブメントを覆っているのは、ハニカムモチーフのハンドギヨシェを施した、美しいグレーグリーンダイヤルだ(それ自体もゴールド素材である)。また文字盤の1時位置は、ポリッシュ仕上げのハンマーが見えるようカッティングされている。チャイムを鳴らすのはまさにこのハンマーだ。サファイアクリスタルには、レイルウェイ風のミニッツトラックも刻まれ、そのすぐ下にはモノブロックのサファイアゴングもある。

Cal.L.U.C 96.32-L
分針が12時位置まで達するとチャイムが鳴るため、1日に24回、時を知らせることになる。ムーブメント自体にはツインバレルが搭載され、チャイムモードがアクティブになったときに、約65時間のパワーリザーブが実現する。

ショパール L.U.C ストライク ワンの販売価格は975万7000円(税込)だ。

我々の考え
私がショパールと、特にこの時計について最も評価しているのは、全体の美しさからメカニズムに至るまで、真に完璧に考え抜かれている点である。2022年に初めて開発されたこのムーブメントの、リューズ一体型のプッシャーおよび着用者がリューズを介してチャイム機能を作動または解除したりできる機能は、間違いなく革新的なのだ。

ショパール L.U.C ストライク ワン
しかし、複雑ゆえにこの時計に興味を持たない人もいるかもしれない(価格を考えればそうなるはずだが)。ただ、落ち着いたトーンのグレーグリーンというギヨシェダイヤルは、まさにこのような時計にふさわしい、控えめな印象を与える。価格といえば、私はてっきり6万6600ドルよりもっと高いものだと思っていた。だからと言って“バリュープロポジション”という言葉を投げかけるつもりはないが、それにしても驚くべき値段だった。

またブランドは、チャイム機構の音響が一流であることを保証するために、かなりの努力をしていることも理解している。今すぐチームと一緒に、ドバイまで赴いてその音を生で聞けたらいいのに。もし現地からこの映像が撮れたら、ぜひシェアしたいと思う。

ショパール L.U.C ストライク ワンに搭載されたCal.L.U.C 96.32-L
今回のリリースで私が言えることは、次の四半世紀でL.U.Cがどのように進化するか楽しみだということだ。

基本情報
ブランド: ショパール(Chopard)
モデル名: L.U.C ストライク ワン(L.U.C Strike One)

直径: 40mm
厚さ: 9.86mm
ケース素材: 18Kエシカルホワイトゴールド
文字盤: グレーグリーン、ハンドギヨシェ
インデックス: アプライド
ストラップ/ブレスレット: アリゲーターストラップ

Cal.L.U.C 96.32-L
ムーブメント情報
キャリバー: L.U.C 96.32-L
機能: 時・分・スモールセコンド、アワーストライク
直径: 33mm
厚さ: 5.6mm
パワーリザーブ: 約65時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 33
クロノメーター: あり

価格 & 発売時期
価格: 975万7000円(税込)
限定: あり、世界限定25本

ショパールはドバイウォッチウィークにてアルパイン イーグルの珠玉のラインナップを発表した。

ドバイに行ったことはないが、史上初の7つ星ホテルを生み出した国にふさわしい宝石のようだ。少なくとも私のなかのドバイは、金無垢に宝石を施した時計、ロビーに噴水がある巨大で豪華なホテル、ロールス・ロイス ファントムなどがイメージされる。

カルティエスーパーコピー新しいアルパイン イーグル サミットの時計は直径41mm、エシカルな18Kイエロー、ホワイト、ローズゴールドで用意(豊富なオプションに感謝)。

本新作の焦点はふたつ。ひとつ目はベゼルにサファイア、ツァボライト、スペサルタイトを含む、カラフルなバゲットカットの宝石がセッティングされたこと。もうひとつは、スイス・ヴァレー州にあるジナル氷河にちなんで名付けられた、“ジナルブルー”ダイヤルがデビューしたことだ。

ショパール アルパイン イーグル サミット
ジナルブルーは写真だと虹色に見え、バイオレットとブルー両方の色合いを反映している。光沢があり、まさにクジャクのようだ。そのツートーンの色合いは、ベゼルにセットされたジェムストーンのグラデーションでも表現される。文字盤はアルパイン イーグルのすべてのモデルと同様、深いテクスチャーを維持。このコレクションはほかに、PVD加工を施した“ゴールデンピーク”、“ヴァルスグレー”、“ドーンピンク”といったダイヤルカラーもラインナップした。

各モデルにはCal.01.15-Cを搭載。透明なサファイアクリスタル製シースルーバックをとおして見える、自動巻きのショパール自社製ムーブメントは、COSC認定も取得している。また完全に巻き上げると、最大約60時間のパワーリザーブを発揮。さらにすべてのモデルにストップセコンド機能も搭載している。

(宝石の)価格は想定の範囲内であり、WGとYGモデルは1250万7000円、RGは1136万3000円(すべて税込)の価格がつけられた。

我々の考え
ショパール アルパイン イーグル サミット
別の日も、そして今日もまたレインボーが出た。まあ、これは厳密にはレインボーではないが。ポイントは、ショパールはカラーや宝石を少し刺激的な方法で取り入れているところだ。たとえ宝石に興味がなくとも、ジュエリーのノウハウが時計製造のカテゴリーに取り入れられていることは間違いない。社内でのクロスオーバーを見るのはいつも楽しい。私は、これらの特定のモデルに日付機能がないことに気づいた。これは同モデルがもう少し華やかであるべきだという考えを補強するものである。ただ私はダイヤモンドをセットしたコンプリケーションを楽しんでいるので、それはもったいないと思う!

確かに華やかな色合いはいい。ジナルブルーは通常、私が嘲笑するタイプのマーケティング戦略的なネーミングであるが、私はショパールブランドとアルプスとの結びつきに心から共感している。ショイフレ一家と話したことはあるだろうか? 彼らはアルプスを愛しているのだ。

しかしここで、なぜ41mmなのかという疑問が残る。これは昨年登場したYG製のアルパイン イーグル(ニューヨークで先行販売)の既視感を感じた。宝石がセットされた大ぶりな時計は汎用性があるのでありがたいが、ただもう少しサイズの幅が欲しい。36mmとかどうだろう。答えを追求し続けるしかない!

基本情報
ブランド: ショパール(Chopard)
モデル名: アルパイン イーグル サミット(Alpine Eagle Summit)
型番: Ref.295363-0002(ゴールデンピーク)、Ref.295363-1007(ジナルブルー)、Ref.295363-1008(ヴァルスグレー)、Ref.295363-5013(ドーンピンク)

直径: 41mm
厚さ: 9.7mm
ケース素材: 18Kエシカルイエローゴールド、ホワイトゴールド、ローズゴールド
文字盤: イーグルの虹彩に着想を得た型打ちサンバーストモチーフのゴールデンピーク、ジナルブルー、ヴァルスグレー、ドーンピンクのブラス製(すべてPVD加工)
インデックス: アプライドとバゲットカットダイヤモンド
夜光: あり、スーパールミノバ® グレードX1
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: テーパー形状の18Kエシカルゴールドブレスレット、トリプルフォールディングバックル

ショパール アルパイン イーグル サミットに搭載されたCal.01.15-C
ムーブメント情報
キャリバー: Chopard 01.15-C
機能: 時・分・センターセコンド(ストップセコンド機能)
直径: 28.8mm
厚さ: 4.95mm
パワーリザーブ: 約60時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 31
クロノメーター: あり

価格 & 発売時期
価格: WGとYGモデルは1250万7000円、RGは1136万3000円(すべて税込)
限定: ショパールブティック限定

カルティエのサヴォアフェールは、すべてそのデザインのために存在する。

ウォッチメーカーとして培ってきた製造技術でさえも、このメゾンは自らの審美眼にかなう時計やムーブメントを生み出すことを主な目的としてしまう。顕著な例が、近年増えているスケルトンウォッチたちだ。

カルティエ「TIME UNLIMITED」。10月1日、最終日まで大盛況のうちに幕を閉じた近年最大のカルティエ ウォッチイベントは、ファンならずともメゾンの時計の魅力を発見する機会となっただろう。ありがたいことに僕もその一役を担わせていただき、クロノス日本版編集長の広田雅将さんと実施している「コノサーズトーク」の公開動画収録を、会期最終日に江口洋品店・時計店オーナーの江口大介さんをお招きして行った。以下から動画も確認できるので、イベントのサマリーとしてもぜひご覧ください。

カルティエスーパーコピー時計このイベントは示唆に富んだもので、大まかには4つのゾーンに分かれてカルティエ ウォッチについての理解を深めることができた。まずは歴史を体感できるムービー、代表的デザインの時計展示、4つのピラーとなるコレクション、そしてラ・ショー・ド・フォンでのウォッチメイキングを学べるコンテンツが用意されていた。僕は、やはり時計の実物展示に最も多くの時間を費やして見学したのだが、カルティエがウォッチメイキングにおいてどういう変遷を辿ってきたのか、企業としてどういう時期にどんな時計が製造されてきたのかを俯瞰することを試みた。カルティエ ウォッチは、1904年のサントスに始まり、1917年のタンクで明らかにユニークな時計づくりのスタンスを確立する。当時メゾンを率いていた3代目当主ルイ・カルティエが、自身の腕時計への熱の高まりを思いのままに表現していったのが最初期で、これは1940年ごろまで続くいわばヒストリーの序章にあたる。この時代のテーマは端的にいうと、「アール・ヌーヴォー的豪奢なものからの脱却」であり、ミニマルさを堅持しつつ、貴金属を折り曲げ、叩いて成形していくジュエラーとしてのケース加工技術がカルティエデザインを実現する要だった。当時の生産数は多くて年間100本台、現存するものとなるとさらに数が少なくなる。実は「TIME UNLIMITED」で目にできたもののなかには、オークションピース級の時計も含まれていたのだ。

ルイ・カルティエ後の激動の時代
 さて、ルイ・カルティエ後の第二章は本当にざっくり分けると1960年代〜2000年代を指すことになるだろう(1950年代はほとんど目立った動きがなかった)。別会社として存在していたロンドン、ニューヨーク支店で独自のデザインが生まれたり、カルティエの経営権が創業家から移ろって一時大量の“安物・偽物タンク”が出回ったりと、激動の時代を迎える。

そこから1972年、ジョゼフ・カヌイ率いる投資会社の元で再建が図られ、1973〜1985年のルイ カルティエ コレクション、1998〜2008年のCPCP(コレクション プリヴェ カルティエ パリ)で、ルイ・カルティエ時代を思わせるシェイプを持った時計たちが甦った。カルティエが有する豊かなヘリテージの価値を十分に理解していた経営陣は、70年代から展開されたマスト タンクなどマス向けの商品も生み出す一方で、メゾンらしい希少なクリエイションを継承することを忘れなかったのだ。

「TIME UNLIMITED」で展示されたヘリテージピース

アンディ・ウォーホルやイヴ・サンローラン、モハメド・アリらがこぞってカルティエのタンクを着用して、一気にプレミアムな時計としてのの地位を確立したのも包括的な戦略の賜物だ。便宜上、第二章としたこの半世紀近い時期は、ここだけでいくつものチャプターに分けられるのだが、本稿でお伝えしたい第三章に行き着きそうにないので今回は割愛させていただく。ともあれ、現代にカルティエ ウォッチを繋いだ激動の時代であり、アイコンであるタンクもサントスも第二章での成功なくしては失われていた時計だっただろう。

2001年、カルティエマニュファクチュール設立から始まる新章

サントス ドゥ カルティエ

Ref.CRWHSA0015 462万円(税込) SSケース(LMサイズ)、47.5 x 39.8mm、手巻き。

やっとたどり着いた第三章は、2001年以降のモダン・カルティエの時代。そう、メゾンがマニュファクチュールを設立した年から始まる物語は、外装の巧みな製造技術でウォッチメイキングを確立したカルティエが、ムーブメントまで内製化を図って何をなそうとしているかが軸になる。2000年代の時計業界は、ETAのエボーシュ提供問題によりムーブメントの自社製化が盛んになった時期であり、自社製=価値が高いという図式も確立された時代だ。実際は、一概にそんなことは言えないのだが、とにかくブランディングのための「インハウス」が各所で踊り、何をもって自社製とするのかは現在でも続く論争のタネにもなっている。

とはいえ、カルティエは違った。根強い開発の結果、2010年にCal.1904 MC、2015年にCal.1847 MCを生み出すのだが、それにとどまらず、2009年より「オート オルロジュリー」コレクションの展開をスタート。文字通り、ハイエンドウォッチメイキングの分野に乗り出したのだ。カルティエといえばメンズ用腕時計の始祖という印象も強いが、文字盤やムーブメントが浮遊しているように見えるつくりが特徴のミステリークロックの製作でも有名。複雑な輪冽構造を開発する技術力を、あくまでデザイン的な驚き、優美さのために費やすのがカルティエ流なのだ。

このスタンスは、オート オルロジュリーコレクションでも遺憾なく発揮され、ミステリークロックを腕時計で実現したロトンド ドゥ カルティエ アストロミステリアス(2016年)や、昨年大きな話題呼んだマス ミステリユーズなどはその最たる例と言える。そして、その一方で近年のカルティエが注力するムーブメントのスケルトナイズこそが、マニュファクチュールを設立して以降のカルティエがたどり着いたお家芸なのではないかと考えている。僕がいま、何より熱狂しているのも、カルティエのスケルトンモデルであったりもする。

ムーブメント設計×職人の手仕上げで志向する未来

カルティエが自らのクリエイティビティを具現化するために、あらゆる分野のサヴォアフェールを内製化したことは自明だ。何しろ、およそ1200人の従業員が働く、ラ・ショー・ド・フォンのマニュファクチュールはスイスでも最大級で、ここではケースや文字盤、各パーツの製造、なかでも針の青焼きや風防の製造まで、とにかくウォッチメイキングにまつわるほとんどのことを担っている。ムーブメントの設計もここで行うことができ、さらにはメゾン・ド・メティエダールという60人前後からなる専門部隊が宝飾のセッティングやエングレービング、エナメル装飾に至るまでを担い、ハイエンドウォッチメイキングを実現する機能までを備える。古くからマニュファクチュールの付近にあった適し的な建物をカルティエが買い取り、2014年にリノベーションしたところに居を構えている。

カルティエのような大企業で、これほどまでに内製化率の高いウォッチメーカーはスイスでも異色の存在だろう。何しろ、デザイン部門とハイエンドまで揃えた時計師たちが一箇所に集まることで、緻密なやりとりが可能になる。それも、何度もコミュニケーションを繰り返すことで、現在のカルティエが理想とするデザインを体現していくのだ。ムーブメントの構造がその審美性に多大な影響を与えるスケルトンムーブメントの場合は、なおさらこのプロセスがクオリティに大きな影響を与えている。

タンク ノルマル(2023年)

カルティエは、ムーブメントのスケルトン化には積極的で、2014年ごろから商品化も増やしてきた。当初はサントスやタンク、クラッシュなどメゾンのアイコンモデルから始まり、時計業界全体のスケルトンブームも牽引してきたほどである。いまでこそ、市場には汎用ムーブを用いたスケルトンモデルも存在しておりある程度一般化したジャンルであるが、専用にムーブメントのデザインを起こして、必要とあらば構造まで変えるメーカーはほぼ皆無と言っていい(数えても片手で足りる)。今年、何度かプロダクトのデザイン担当者と話をしたが、サントス デュモンのスケルトンモデルで採用されたマイクロローターは、かつてアルベルト・サントス=デュモンが乗った飛行機であるドゥモワゼル号をムーブメント上に浮かべるというアイデアから開発が進んだ。パリの街を思わせるブリッジのデザインは、審美性の観点から数十枚のスケッチを描いた末にようやくたどり着いたものであるという。決して、この時計のサイズで技術的に競争力のあるマイクロロータームーブメントを開発しよう、という着想ではなく、サントス デュモンというルーツとイメージが原動力なのだ。実は、カルティエにとって初となるマイクロローターだったのだが、それ自体を特別なこととせずにデザインを具現化するためのプロセスとして、粛々と開発がなされたというのがなんともこのメゾンらしい。

H.モーザーの新しいストリームライナーに見覚えはないだろうか?

新しくなったストリームライナーは、単にケースサイズと文字盤が変わっただけではない。今日に至るまで、モーザーが成し遂げてきた最も重要な功績のひとつを支えるプラットフォームでもあるのだ。モーザーの一体型ブレスレットの特徴として受け継がれている。しかし発売から3年を経た今、ストリームライナーのフォルムがよりスリムになり、39mmという小振りなプラットフォームをベースに絶妙に調整をし、新しい時刻表示のみの時計に生まれ変わった。

最も顕著な変更点は、パテックフィリップスーパーコピーこれまでセンターセコンドのモデルがいくつかあった新型ストリームライナーに、新たに印象的なグラン・フーエナメル文字盤を採用したことだ。“アクアブルー”と名付けられたこの色は、泡立つ深いブルーの水面のような色合いをしており、オンブレ効果を得るべく3つの顔料を12回焼成しているという。最近のH.モーザーのいくつかのリリースのように、ダイヤルにサインはない。(ブランドCEOである)エドゥアルド・メイラン(Edouard Meylan)氏はかつて、文字盤の名前ではなく、時計そのものがブランドの品質を示すのに必要な古い懐中時計を見て、このアイデアを思いついたのだと私に語ったことがある。しかし、このブランドの最近のグラン・フーダイヤルとは異なり、このダイヤルは6時位置にオフセットされたスモールセコンドが、サーキュラーパターンを持つラッカー仕上げのインダイヤルに配されている。

ただ、これが最も重要な変更ではないかもしれない。というのも新しいCal.HMC 500を採用したことで、時計の直径が1mm、厚さが0.9mmと、わずかに小さくなったのだ。この新しい100%自社製マイクロロータームーブメントのサイズは30mm径×4.5mm厚と、21世紀に入ってからのブランド最小ムーブメントとなった。重量感のあるプラチナ製ローターと、より小振りでスリムなコンポーネントを実現した同ムーブメントは、約74時間のパワーリザーブを確保している。

H.モーザー ストリームライナー・スモールセコンド ブルーエナメルに搭載されたCal.HMC 500
ムーブメントのサイズを小さくしたことで、ケースラインがより細長く、洗練されたものになった。オリジナルのストリームライナー・スモールセコンドが発売当時2万1900ドル(日本円で約330万円)だったのに対し、新作は534万6000円(税込予価)と大幅な値上げになったが、最終的にこのブランドを購入する理由を探していた潜在的なH.モーザーファンにとっては、文字盤と新しいムーブメントにそれだけの価値があるかもしれない。

我々の考え
すべてのカードを切った最後、H.モーザーは小さなストリームライナーの新作を発表すると言ったとき、私はかなりわくわくした。この時計は、市場で大流行し続けているブレスレット一体型のスポーツウォッチに代わる、斬新な選択肢を提供してくれるからだ。しかし、洗練されたフォルムと興味深いブレスレットのデザインにもかかわらず、私の好みには少し大仰すぎて、手首にも少し大きいと感じていた。

H.モーザー ストリームライナー・スモールセコンド ブルーエナメルのダイヤル
 直径や厚さを1mm変えるだけで世界が変わるとは言わない。どの時計においても、その1mmが“大きすぎるよ、ちょっと待って”、という瞬間になることはあまりないのだ。しかしこの場合、グラン・フーエナメルがどれほど印象的であろうと、この1mmがそれ以上の効果をもたらし、文字盤よりもストリームライナー自体のほうがはるかに優れている強く主張できる。

H.モーザー ストリームライナー・スモールセコンド ブルーエナメルのダイヤル
グラン・フーは本当に素晴らしいけどね。

H.モーザー ストリームライナー・スモールセコンド ブルーエナメルの製造過程

ブランドの観点から見ると、サイズはモーザーにとって制限される要因であり、それの限界はほぼムーブメントにのみかかっていた。以前エドゥアルド・メイラン氏は、長いあいだ、より小さなムーブメントを推し進めてきたと語っていた。そしてH.モーザーが、最初から最後まで小規模なマニュファクチュール(コンプリケーションを含む)で成し遂げたことは素晴らしいことだったが、なかでも今回の新しいHMC 500は、これまでで最も重要な成果のひとつかもしれない。また、将来的には徐々に小さなムーブメントも製造できるようになるという可能性も秘めている。

H.モーザー ストリームライナー・スモールセコンド ブルーエナメル
 ムーブメントを小さくすることで、モーザーは時計のラインを洗練させるのに十分なだけのケースシェイプを削ることができ、それはすぐに改善された。ケースの側面は上から下へ、ダイヤルからベゼルへと滑らかで、ケースとブレスレットの境界もシームレスなものになっている。厚さ8.1mmという夢のストリームライナーほどではないが、そのレベルに達しつつある。

H. Moser Streamliner
 ムーブメントのデザインだけでなく、仕上げも素晴らしい。私はモーザーのアンスラサイトのトーンと、それがほかのムーブメントの部分とどのように調和しているか見るのが大好きで、内角とスケルトナイズはムーブメントに対する自身の評価を高めている。

H.モーザー Cal.HMC 500
H.モーザー ストリームライナー・スモールセコンド ブルーエナメルのマイクロローター
 奇妙なことに、私が最も迷っているのはグラン・フーのフュメダイヤルである。誤解のないように言っておくが、色も質感も仕上がりも美しいと感じる。スモールセコンドの腕時計も普段は好きだ。しかし、グラン・フーエナメルは純粋で途切れることのないフォルムがいい。スモールセコンドのインダイヤルが独立しているのは、実物だと写真ほど気にならなかったが、スモールセコンドを完全に排除して文字盤だけ独立させる選択肢も見てみたかった。

 そして、みんなも感じるかもしれないが、私が抱く最後の疑問は買い手が価格にどう反応するかである。新しいムーブメントとエナメル文字盤の芸術性がもたらす、潜在的な価値は理解できる。しかし3万ドルを超えたことで、ストリームライナーは新たな価格帯となり、厳しい競争にさらされることになった。私見ではあるが、仕上げは素晴らしいものの、それを理由に価格をつけることは、それを考慮しない多くの消費者にとって、メインとなるデザインに魅力を持つかもしれない時計が売りにくいものだといつも感じている。

 現在のストリームライナーは、ロイヤル オークやノーチラスのような一般的に入手困難な腕時計に代わる、より手頃で独立した代替品という位置づけではなく、(ロイヤル オークの)16202の価格と拮抗している。また、それと同じくらい入手困難になっており、何人かの読者が“スモークサーモン”ダイヤルを入手するのを手伝ってほしいと、Instagramにメッセージを送ってきたこともある(念のために言っておくが、私には何の力もない)。

 ただこのような場合、私はブランドをある程度尊重する。彼らは調査をして市場を知っているから、おそらく彼らが満たすことができるよりもはるかに多くの要求を受けると思う。この時計にはそれだけの価値があるのだ。

基本情報
ブランド: H.モーザー(H. Moser & Cie.)
モデル名: ストリームライナー・スモールセコンド ブルーエナメル(Streamliner Small Seconds Blue Enamel)
型番: 6500-1200

直径: 39mm
厚さ: 10.9mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: 槌目仕上げのアクアブルー グラン・フーフュメエナメル、ラッカー仕上げと円形模様が施されたインダイヤル
インデックス: アプライド
夜光: あり、グロボライト® インサート付き時・分針
防水性能: 120m
ストラップ/ブレスレット: 一体型スティール製ブレスレット

H.モーザー ストリームライナー・スモールセコンド ブルーエナメルに搭載されたCal.HMC 500
H.モーザー製、Cal.HMC 500。

ムーブメント情報
キャリバー: HMC 500
機能: 時・分・スモールセコンド
直径: 30mm
厚さ: 4.5mm
パワーリザーブ: 約3日間(約74時間)
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 26
追加情報: シュトラウマン® ひげぜんまい、モーザーストライプ仕上げ

価格 & 発売時期
価格: 534万6000円(税込予価)