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モーメンタム UTD エクリプス シンクソーラーを実機レビュー

アナデジウォッチの世界は、スポーツウォッチのなかでもひときわユニークで楽しさにあふれたニッチなジャンルだ。ある意味では、アナデジウォッチこそが元祖スマートウォッチといえる。伝統的なアナログの時刻表示と、追加情報を映し出すためのひとつまたは複数の画面を組み合わせているのだ。

70年代半ばのクォーツ危機のあとに誕生したアナデジウォッチは、一時期人気を博したが、このフォーマットが真のメインストリームで成功を収めることはなかった。80年代のカシオ、シチズン、クロノスポーツから90年代のオメガ、ブライトリングに至るまで、多くのブランドがアナデジウォッチを発表してきた。これらのブランドのなかには、シチズンのスカイホークシリーズやブライトリングのエアロスペースシリーズなど、長期にわたって大きな成功を収めたものもあるが、ロレックススーパーコピー代金引換激安アナデジウォッチはニッチプレーヤーであり、ブランドをリードする製品ではない。

今年7月、カナダのブランド、モーメンタムがアナデジウォッチの歴史に残るカルト的な名作、クロノシュポルト UDTの新作を発表した。モーメンタムの現オーナーは、今はなきクロノシュポルトを所有していた人物である。バンクーバーを拠点とするこのブランドが、マグナムP.I.にふさわしい2023年のシークォーツ30など、クロノシュポルトの過去のモデルのいくつかを取り戻し始めたのち、モーメンタムファンは非常に特殊なものを求めるようになった。それはつまり、新しいUDTだ。

オリジナルのリリースについては以前こちらで取り上げたので、細部の説明は控えるが、最終的に完成したのは、ブラックIP仕上げのスティール製ソーラークォーツウォッチで、サファイアクリスタル風防、セラミック製ベゼル、6時位置のダイヤルにはめ込まれた画面が特徴だ。サイズは幅43mm×厚さ11.7mm×全長48.2mmだ。

モーメンタムは42mm×11.7mm×47mmと表記しているが、この数値の違いは計測位置によるものだと思われる。ベゼルの幅は42mmで、実際のラグ穴間(ラグホーンの端ではなく)の距離はおよそ47mmだ。防水性能は200m(プッシュボタンをねじ込んだ状態)で、インデックスと針にはC3スーパールミノバが使用されている。

UDTとは?
読者の皆さんは、おそらく僕ほどこの分野に深くハマっていない方もいるかもしれないので、簡単にクロノシュポルトの歴史を説明しておこう。クロノシュポルトの歴史の多くはまだひとつのストーリーにまとめられていないが、UDTの名前の由来は第2次世界大戦中に創設され、現在のアメリカ海軍ネイビーシールズの前身となる水中爆破チーム(Underwater Demolition Teams)にちなんでいる。もっともUDTウォッチは第2次世界大戦中ではなく、むしろ80年代初頭に、シールズのチームメンバーの要望やチームの任務の厳しさに耐えることができる先進的なダイバーズウォッチとして誕生した。

おそらく『ランボー/怒りの脱出(原題:Rambo II)』(1985年)でシルヴェスター・スタローンが腕につけていた時計として最もよく知られるクロノシュポルト UDTには、いくつかの異なるバージョンが存在した。この時計の基本的なフォーマットやムーブメント、ダイヤルの6時位置のアナデジ表示は、同時代のブライトリング プルトンなど、ほかの時計の基礎にもなっている。

前述のとおりアナデジはニッチであり、そのなかにクロノスポーツ UDTがある。もしスポーツウォッチや軍用由来、そして80年代のマキシマリズム(過剰主義)が好みなら、その魅力は理解しやすいだろう。確かに、現代ではブライトリングやシチズンがアナデジの火を受け継いでいるが、このフォーマットのルーツと、その冒険的でワイルドな雰囲気はクロノスポーツ UDTやその仲間たちによって築かれたものだ。

モーメンタム UTD エクリプス シンクソーラーを着用
“NewDT”(このニックネームはトム・プレイス氏によるもの)はシンプルな箱に収められ、ラバーまたはナイロン製のさまざまなストラップから選択可能だ。僕は“ブラック・ハイパー・ラバー”ストラップを選んだが、これは標準的なウェーブスタイルのダイビングストラップに近い。価格帯を考えれば十分満足できるが、私はもともとNATOストラップに付け替えるつもりだった。

ケースのシェイプは非常にフラットで、短いラグ、幅広で平らなベゼル、そしてベゼルの縁に沿ったフラットなサファイアクリスタル風防を備えている。操作系はすべて3時側に配置されており、3つのリューズとプッシュボタンはすべてねじ込み式だが、リューズを開けた状態でも50mの防水性が確保できる(念のため)。ねじ込み式のリューズ・プッシュボタンは扱いが少し面倒だと感じるから僕は開けたままで問題ないと思っている。

画面のユーザーインターフェース(UI)はとてもシンプルだ。時刻表示があり、設定すると自動的にアナログ針が更新される。この機能のおかげで、ふたつの時刻を自分で同期する必要がない(よくある手間のかかる作業だ)。もっとも、アナログ表示には秒針がないため、同期する対象がひとつ減ることになる。

中央のリューズは3時位置の横にあり、時刻、第2時間帯、アラーム、クロノグラフの各モードを切り替えることができる。1時間ごとのチャイム設定も可能で、第2時間帯を自由に設定できる(つまり、ニューファンドランドやスリランカなど、フルアワー以外のGMTオフセットにも対応できる)。ただしモーメンタム UDTにはデジタル画面用のバックライトが搭載されていない。

複数の“ページ”があるモードでは、上部のプッシュボタン(2時位置)でオプションを切り替えられる。これは主に標準時刻モードで時刻と日付を切り替える際に使用するものだ。画面は明るく視認性が高く、シンプルな設計で余計な機能はない。しっかりとした操作感のあるプッシュボタンだが、フィードバックがやや曖昧で、全体の体験は80年代をほうふつとさせる。それでも装着時には十分に機能している。

画面は別として、文字盤はムーブメントのソーラー充電に対応するなめらかな黒色だ。針にはやや場違いに感じるポリッシュ仕上げの金属が使われており(ほかのデザインがマットブラックであるため)、やや不釣り合いな印象も受ける。しかし視認性は非常に優れている。針には夜光が施され、日常使いに十分な量が針と文字盤に塗布されている点は評価したい(特に画面にバックライトがないことを考慮すると)。

内部には、この用途のためにカスタマイズされたセイコーエプソン製AB12Aクォーツムーブメントを搭載しており、ソーラー充電や画面との手動同期が可能。光を浴びなくとも3カ月間バッテリーが持続する。

手首に装着してみると、モーメンタム UDTはプロポーションから想像していたよりも大きめに感じるが、不快さはまったくなく、そのサイジングにはしっかりとした意図を感じる。つけ心地は多くの点でSKX007に似ている。僕の手首には大きいが決して大きすぎるわけではない。

要するに370ドル(日本円で約5万6000円)の時計としてはとても気に入っている。

競合
どんな時計も、アナログかデジタルか判断できない奇妙なウォッチでさえも、真空のなかで存在しているわけではない。そしてUDTもほかのアナデジと競合をしているのだ。以下のモデルも検討してみてはどうか。

まずアナデジを初めて試すなら、カシオやG-SHOCKの無数のオプションがこの分野での“お得の王者”といえる。これにはカシオの八角形のモデルやプロトレック、そして過去40年間に製造された変わり種のカシオも含まれるが、それに限った話ではない。誤解しないで欲しい。アナデジに興味があるなら、特にeBayの“デジタルの引き出し”を漁るのが好きな人にとっては100ドル(日本円で約1万5000円)以下で始められる。

具体的に言うと、カシオの“ウェーブセプター ソーラー”がある。100ドル(日本円で約1万5000円)前後でさまざまなバージョンがあり、40mmの幅に加え、画面のバックライトとムーブメントの原子電波同期を搭載している。モーメンタムほどの洗練されたスタイルやクールさには欠けるが、しっかりした品質だ。

citizen aqualand
僕のシチズン アクアランド JP2007-17W。

次に、アナデジの豊富なラインナップを展開するシチズン製を選ぶことになるだろう。特にモーメンタム UDTよりも予算があるなら、シチズンのモデルに価値が出てくる。440ドル(日本円で約6万7000円)で購入できる、僕のお気に入りのひとつであるアクアランド P2007-17Wは、ダイブコンピューターが登場する以前に作られたシチズンのダイブコンピューターの現代版で、夜光文字盤、抜群のつけ心地、そして水深センサーも備えている。ただしUDTよりもかなり大きい。それでもつけ心地のよさは同等だ。

またシチズンは最近、より現代的なアナデジであるプロマスター ランド U822を発売した。高解像度のMIPディスプレイ、バックライト、追加機能が搭載されており、価格は12万6500円(税込)、44mmの幅を持つ大きめのモデルだ。私はレビュー用に2本所有しているが、デザインもかわいらしく、操作性も高く、非常に実用的だ。

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セイコー  “アーニー” SNJ025。

セイコーもUDTよりもかなり大きめだが、バックライト付きでおよそ525ドルのアーニーでこの市場に参入している。アーニーはとても気に入っており、ここでSNJ025のハンズオンレビューも行ったが、やはりUDTのほうが好みだ。理想を言えば、どちらも手に入れて"アクションスター"のようなペアにしてみるのもありかも…(冗談だよ、多分)。

それ以上の価格帯になると、ブライトリングのようなモデルにもっと多くの出費が必要だ(中古で40mmのエアロスペースがまだ注目されていないようだ)。この価格設定ではモーメンタム UDTも競合がないわけではない。今日ではよい選択肢が多く揃っているが、正確に1対1で競争できる相手はいない。

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おわりに
これ以上書くことはないだろう。モーメンタムは、クロノシュポルトの系譜を感じさせながらも、旧モデルの直接的な再現を避け、手ごろな価格でUDTを作り上げた。クロノシュポルトのファンには、オリジナルにより近いクローンを望む人もいるかもしれないが、モーメンタムが新しいムーブメントの範囲で独自のアプローチを取ったのは賢明だったと思う。

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確かに、バックライトや秒針を備えた将来のバージョン(むき出しのスティールやほかの文字盤カラーも加わるといい)も見てみたい気はするが、モーメンタムの最初の試みとして、この価格帯と完成度では文句のつけようがないだろう。

機械式時計を愛する人にとっても、379ドル(日本円で約5万7000円)のこのモデルはとても楽しめる素晴らしいクォーツの選択肢だ。スポーティで、特化されていて、少し奇妙で、完全にマニア向けである。

ブライトリングのNFLライセンス契約が、チームカラーの文字盤やチームロゴの使用以上の意味を持つ理由。

米国市場はスイス時計業界にとってますます重要な存在になってきており、世界最古のブランドが初めて、アメリカ人向けに直接製品を展開し始める可能性が出てきている。

 ブライトリングスーパーコピー代引き 口コミ第1位数年前のWatchTime NYで、かなり大きなあるスイスブランドの米国市場を担当する社長が、そのブランドの生産量のおよそ20%が米国市場に供給されており、その割合を25%まで引き上げるために奮闘していると話してくれた。そしてちょうど2週間前、HODINKEEとUBSが主催したHouse of Craftで、オーデマ ピゲのアメリカ地域CEOであるジニー・ライト(Ginny Wright)氏が、米国は正式にオーデマ ピゲにとって最大の市場だと同僚のマライカ・クロフォードに語った。これらふたつのブランドは単純に比較できるものではないが、米国市場はパンデミックやその後の急増した売上を経てもなお、確実に成長を続けていることを証明している。

 スイス時計産業連盟によると、2021年に米国は中国を抜いてスイス時計の最大輸出市場となった。同連盟の最新レポート(2024年9月)が、このやや逸話的だった情報を裏付けている。スイス時計の輸出が2023年9月と比べて12.4%減少し市場全体が落ち込むなかでも、米国市場は同期間に2.4%成長を続けている。このレポートによると、8月は7.6%増(世界全体では6.9%増)、7月は11.4%増(同1.6%増)、6月は6.5%増(同7.2%減)と、この夏を通して米国市場の堅調さを見て取れる。

Breitling's NFL tailgate event
 米国の時計市場がそのポテンシャルを何度も証明している今、スイスのブランドが世界最強のこの市場にアピールするため、実際に行動を起こそうとしているのは当然だろう。我々時計愛好家は、この業界の製品サイクルの長さをよく知っている。パテック フィリップは、新作のキュビタス グランドデイト Ref.5822Pの開発に6年もの歳月を費やした。単純に考えれば、6年前の米国市場は世界第2位で、香港(第1位)、中国(第3位)、イギリス(第4位)が大きく成長する一方で後退していた。もし、米国市場の一員であるあなたに向けたデザインではないと感じる製品があったとすれば、それはおそらくまだそのようにはつくられていないからだ。

 時計業界の“新たな”最大市場に対応した品揃えが見られるようになるかは、時が経たなければ分からないが、マーケティング費用ははるかに短い時間軸で配分される。マーケティングキャンペーンは、ブランド全体のルック&フィールを変える上で大いに役立つ。オーデマ ピゲを見ればそれがよく分かるだろう。しかし、限定版プロジェクトやコラボレーションは、注目してみればさらに明確なブランドイメージを示している。これもまたオーデマ ピゲの例を見てほしい。特別なプロジェクトに分配される利益や関連する開発費は厳密には“マーケティング費用”ではないが、短期間でブランドのメッセージングを変える力を持っている。この観点で、ブライトリングがニューヨークのミートパッキング地区でNFLとの公式ライセンス製品のコレクションを祝う“テールゲート”パーティを開催しているのを見かけたとき、私は思わず興味を引かれた。

 アメリカでは日曜日はNFLのものだ。“プロフットボールがアメリカの日曜日を教会から奪った”というフレーズをよく耳にするが、これは実に的を射ている。2024年シーズンのNFL開幕週末には、合計で1億2300万人のアメリカ人が少なくとも試合の一部を観戦しており、これは国民のおよそ36%に相当する。一方、ギャラップの調査によると、2021年から2023年にかけて、毎週教会に通っていたアメリカ人は21%、ほぼ毎週通っていた人は9%で、合わせて約30%となっている。

A vintage NFL watch
1971年製もラファイエット・ウォッチ カンザスシティ・チーフスモデル。Image: courtesy of The Watch Preserve

A 2000 Breitling for the Baltimore Ravens
2000年製のブライトリング クロノマット 100本限定 ボルティモア・レイブンズモデル。

 この視聴者数からも分かるように、NFLはまさにビッグビジネスである。その規模は約180億ドル(日本円で約2兆7400億円)に達し、80億ドル(日本円で約1兆2200億円)の差をつけてNFLは世界最大のスポーツリーグとなっている。アメリカ国外で最大のリーグとしてはイングランド・プレミアリーグがあり、その収益は約66億ドル(日本円で約1兆円)だ。ちなみにF1は少し下の32億ドル(日本円で約4870億3000万円)に位置している。

 LVMHがF1スポンサーの座を“年間1億ドルの可能性”でロレックスに競り勝ったことを覚えているだろうか。CBS、NBC、FOX、ディズニー、Amazonは、NFLの試合を放送するために年間約100億ドル(日本円で約1兆5200億円)を支払っているが、これは氷山の一角に過ぎない。報道によると、Foxはトム・ブレイディ(Tom Brady)氏に対して、NFL中継の一部でカラーコメンテーターを務める契約として年間3750万ドル(日本円で約57億1000万円)を10年間支払う予定だ。この3億7500万ドル(日本円で約570億2000万円)という契約は、ブレイディ氏の現役時代の収入3億3300万ドル(日本円で約500億7000万円)を上回り、これにより彼はFoxメディア全体で最高クラスの報酬を受ける“スター”のひとりとなった。

 世界中のあらゆるブランドが、パートナーシップやライセンス契約を通じてこの動きに乗じている。NFLのコンシューマープロダクツ担当副社長ライアン・サミュエルソン(Ryan Samuelson)氏は、ライセンス事業が100以上のブランドと提携していることを認めている。サミュエルソン氏によれば、リーグの国際シリーズのおかげでNFLへの世界的な関心が高まっているという。レギュラーシーズンの試合は2007年からロンドンで開催され、2016年にはメキシコ、2022年にはドイツ、2024年にはブラジル、そして2025年にはスペインでの開催が予定されている。これが欧州ブランドからの関心を引き寄せる原動力になっているとサミュエルソン氏は説明する。「これらのブランドが“これは私たちが本当に活用し、つながりたいものだ。このリーグは国際的に大きな熱狂と支持を集めている”と動き始めているのは、自然な流れだと思います」

Breitling and NFL collaboration watches
 NFLがアメリカ国内で圧倒的な注目を集め、さらに世界的な拡大を目指す姿勢が、ブライトリングのようなブランドを引きつけている。ブライトリングはミートパッキング地区のテールゲートでNFLとのライセンス契約を発表し、NFLの32チームそれぞれにクロノマット B01のフルラインナップを展開すると発表した。時計の9時位置にあるインダイヤルには各チームのオフィシャルロゴを配し、文字盤は各チームのジャージカラーに合わせたパントーンカラー、シースルーバックにはNFLのリーグロゴ“シールド”があしらわれている。各チームにつき104本、合計で3328本が製造された。小売価格はブレスレット仕様で9200ドル(日本円で約140万円)だ。

 ブライトリングUSA代表のティエリー・プリセール(Thierry Prissert)氏に話を聞くと、この3328本の時計にとどまらず、ブランドが一層の熱意をもって取り組んでいることがよく分かる。製品を完璧に仕上げるために18カ月の開発期間が費やされたが、それ以上に製品展開のスケールが大きい。発表イベントでは7チーム分の時計が販売されたが、「新たなチームの時計が発売されるたびに、地元の宝石店やブティックでローンチイベントを開催します」とプリセール氏は語る。「感謝祭までに、あと25のイベントを予定しています」。このキャンペーンは、ライセンス契約によりロイヤリティでマージンが減少しているなかで、比較的少量の時計を発表するために本気で行われているものだ。プリセール氏は、NFLとのパートナーシップが「米国における当社の最重要ライセンス契約」であることを認めている。

Breitling x NFL Chicago Bears watch
 各ローカルイベントのあと、この時計は正式に購入可能となる。「少なくとも販売分の60%は米国市場で確保しています」とプリセール氏は説明している。これは各チームのファンが最初にこの時計を手に入れられるようにするための配慮だ。なかには60%では足りない地域もあるかもしれない。グリーンベイにある唯一のブライトリング店舗からは“怒りの”電話がプリセール氏に届いたそうで、この店舗では2日間で45本が売れたという。

 時計愛好家にとってはあまり注目されないかもしれないが、このパートナーシップの象徴的なディテールとして、裏蓋に施されたNFLのシールドロゴがある。サミュエルソン氏は「このロゴは一般的に、私たちのオンフィールドパートナーや最高位のパートナーにしか提供しません」と明言している。オンフィールドパートナーとは、単なるライセンシーではなく、NFLの正式なパートナーであり、バドライト(“NFL公式ビールスポンサー”)やビザ(“NFL公式支払いカード”)のような存在だ。ブライトリングのシールドロゴの使用についてサミュエルソン氏は、ブライトリングの“在庫に対する大規模なコミットメント”がブランドの本気度をNFLに示したと説明している。

「私たちにとって大事なのは金額ではなく、ファンがこのブランドとつながり、楽しむ機会を確保することです」とサミュエルソン氏は話す。ブライトリングが限られたチームのためにわずか12本の高級時計をつくるのではなく、多くのファンに届けようとしたことで、通常はライセンシーには許可されないロゴの使用が可能になり、公式パートナーシップに向けた話が進んでいるのだ。

Breitling x NFL caseback with NFL shield
「私はどうしてもNFLのシールドロゴを手に入れたかったのです。そして、私たちはそれを手に入れました」とプリセール氏は述べている。さらに彼はブライトリングがNFLとのパートナーシップをより大規模なものに成長させたいという意欲を率直に語った。もし実現すれば、これが初めての試みとなる。NFLが時計ブランドと提携したり、“NFL公式腕時計”として契約を交わしたことはこれまで1度もない。プリセール氏は真剣な口調でこう述べる。「将来的にどうなるかは分かりませんが、より大きな契約に発展するかもしれませんし、ライセンスの更新になるかもしれません。しかしこれは私たちにとって非常に興味深い何かの始まりだと考えています。これがブライトリングの見解です」

 ブライトリングとNFLのライセンス契約は、パートナーシップの継続や拡大を両者が望んでいることを考えると、文字どおり3328本のクロノマット B01以上の価値があり、さらに強固な米国市場の重要性や関心の高まりを示すものでもある。この動きがさらに拡大し、近い将来ほかの時計ブランドが米国市場に積極的に向かうようになるとはまだ断言できないが、ブライトリングがNFLの重要性を認識していることは確かだ。これはアメリカの心に薄く触れるだけの契約ではなく、アメリカ文化の中核に本質的に関わる真の投資だ。

ミンの新作37.02 “ミニマリスト”が起こすかもしれない革新。

トップ画像には、ミンが腕時計の歴史上で初めてのものと考えている、ある要素が写っている。その違いは絶妙で、ほとんど信じがたいものだが、見つけるのは比較的簡単なはずだ。そのイノベーションとは何か? ヒントが必要なら針を見てみよう。予想をコメント欄に書き込んでみて欲しい。だが、不正はなしだ。ヒントが必要なら、下記の写真を見てみよう。

まだ分からない? カルティエスーパーコピー代引き 激安通販優良店では明かりをつけてみよう。次の写真を見れば、そのイノベーションが見えてくるはずだ。これがミン 37.02 “ミニマリスト”だ。時針と分針を備えた、シンプルなセリタ製自動巻きムーブメントのスティールウォッチにふさわしい名前である。しかしそのトリックはサファイア製ダイヤルに隠されている。唯一の見分け方は青色に発光するスーパールミノバ X1を使った針だ。サファイアダイヤルのインデックスには、ミン独自の液体発光塗料“ポーラーホワイト”が充填されている。この塗料は、真に白く発光する夜光素材としてはきわめて希少なものだ(唯一ではないが)。そう、これは白色に輝く夜光なのだ。

ミン・テイン(Ming Thein)氏は、白く発光する夜光塗料を長年追い求めており、その探求について昨年、ブランドのブログで言及している。彼は、白色光はほかのすべての色が等しく組み合わさったものにすぎないのだから可能なはずだとサプライヤーに主張し続けてきたと語った。しかしサプライヤーは応じることができなかった(またはその意図がなかった)ようだ。そこでミンは、必要な材料を自ら調達してこのプロジェクトに挑んだ。それだけでもきわめて印象的だ。

それ以外の点では、この時計は比較的シンプルだ。17.01と27.01モデルと同様に、ミンのデザイン哲学と彼らが腕時計の核とはかくあるべしと考えているものを体現しており、37.02はこれらのモデルの進化形または思想を受け継いでいる。この時計はブランド特有のフレアラグ、サテンとポリッシュ仕上げの組み合わせ、直径38mm、厚さ11mmのバランスの取れたSS製ケース、そして100mの防水性能を備えている。まさに“ミン”を最も純粋で完璧な形で表現した一本だ。

ムーブメントには、ミンが手を加えたセリタ製SW300.M1自動巻きを採用し、約45時間のパワーリザーブを備えている。アンスラサイト仕上げのスケルトンブリッジとカスタマイズされたローターが特徴で、多くの時計に搭載されているベーシックなセリタ製ムーブメントよりも若干の改良が施されている。ただし、この新作はミンのモデルのなかでムーブメントを主役としたものではない(とはいえ同ブランドにはそうしたモデルも豊富に揃っている)。

ここで触れておくべきもうひとつの重要な達成がある。これは、ミンのスイスに新設されたオロロジー・ミンで、設計・エンジニアリング・管理のすべてを自社で行った初の腕時計である。このプロジェクトはおよそ2年前、イノベーションの追求とよりよい価値の提供、サプライチェーンの管理強化、リードタイム短縮を目指して始まった。この時計は即時出荷が可能で、限定版ではない。

私が初めて37.02 ミニマリストを見たとき、残念ながらすでにサプライズが台無しになっていたため何を目にしているのか心の準備ができていた。しかしGeneva Watch Daysでほかのジャーナリストたちと一緒にこの時計を見た際、下の写真のどこが“おかしい”のかを理解しようと頭を巡らせる彼らの姿を見るのは楽しかった。そういう意味では、37.02 ミニマリストの最大のセールスポイントが、同時に最大の課題にもなりうるのかもしれない。少なくとも今のところ、私たちの脳はこうした変化に対応できるようにはできていないと感じている。

市場に出回っている純粋な白色の夜光塗料は、ほかに思い浮かばない。私たちが色をどう感じるかは、光が表面にどのように作用するかに基づいており、周囲の環境もその表面に影響を与える。そのためたとえ画像の色補正を完璧に行っても、ケースの金属やガラスに奇妙な色味が映り込むことがあるのだ。青色のスーパールミノバX1を使うのは、夜光部分が白く光ることを証明するために必要だったが、実際にはポーラーホワイト塗料に少し紫がかった色味が出ることがある。ただ私たちの脳が白を夜光として認識しにくいだけなのかもしれない。

遮光カーテンを引いた部屋でこの時計をつけてみた。夜光塗料が蓄光されていることも分かっていたし、自分の顔から1インチ(約2.5cm)先がかろうじて見える状況にもかかわらず、私の脳は白いプリントが外部の光で照らされている時計を見ていると確信していた。実際には違うと理解しているのに、私の脳はそれを認めようとしなかった。

この時計が悪いと言いたいわけではない。価格はSW-300ムーブメントとしては少し割高だが、エントリーモデルとしては堅実で、スケルトン加工や仕上げにひと手間かけている。そのほかのデザインもミンのデザイン哲学に合致している。ただ私たちが光と闇を見る際に働く奇妙な心理的条件付けがあり、この時計はそれを覆すものだ。それが心理的に合わない人もいるかもしれないが、少なくともこれは腕時計として、そして夜光塗料が暗闇で時間を読み取る助けになる時計として、しっかり機能している。それこそが重要なポイントだろう。

私はこのミンのイノベーションを評価しており、それ自体が革新のように感じられる。それ以上に、今後これをほかの時計にどう応用していくのかに興味がある。たとえば、ダイナミックなダイヤル構造とパターンを持つ20.01にこの新しいポーラーホワイト塗料が採用されたらおもしろいだろう。近いうちにそんなモデルが登場するのではないかと確信している。

新しい夜光塗料を抜きにしても、このモデルはミンの堅実なエントリーモデルであり、同社が革新と成長を続けるなかで息の長い存在になるだろう。ミニマリストなデザインが好きな人も、ダイヤルが光と作用して独特の反転効果を生むなど、ブランドの特徴を好む人も、この時計は一考の価値がある。そして幸運なことにこのブランドの多くのモデルとは異なり、購入に踏み切るまでにじっくり検討する時間がある。

ミン 37.02 “ミニマリスト”。直径38mm×厚さ11mm、ステンレススティール製ケース、100m防水。ミン独自のポーラーホワイト塗料を注入したサファイア製ダイヤル、時・分針にはスーパールミノバX1を採用。セリタ製SW300.M1自動巻きムーブメント、約45時間のパワーリザーブ。アンスラサイトスケルトン製ブリッジおよびカスタマイズローター。フロントとリアには両面反射防止コーティング付きドーム型サファイアクリスタル。ラグ幅20mmのミンFKM製ブラックラバーストラップ(タックバックルシステム)価格は3250スイスフラン(約57万円)。