記事一覧

パテック フィリップの希少なワンプッシュスプリットセコンドクロノグラフがモナコオークションに出品

この時代のパテック フィリップ ワンプッシュ スプリット セコンドクロノグラフを見つけるのはほぼ不可能である。このような出自を持つ時計を手に入れるチャンスは一生に1度かもしれない。

モナコ・レジェンド・グループはこの春、魅力的なストーリーを持つ夢のような時計をコレクターに提供する。実際、この時計は1920年代後半から1930年代にかけて、アメリカのモータースポーツと航空史における最も重要な瞬間のいくつかを辿ったと言える。時計部門の会長であるダビデ・パルメジャーニ(Davide Parmegiani)氏率いるオークションハウスは、この時計を最近の記憶のなかで最も重要なヴィンテージパテック フィリップのひとつと呼んでいる。私も同感だ。

今回オークションに出品されるワンプッシュ スプリット セコンドクロノグラフは、1928、29年の冬にサンモリッツへスキー旅行に行った際、ロンドンを拠点とするセルフリッジズ百貨店を設立したアメリカの実業家、パテックフィリップ スーパーコピー代金引換を激安ハリー・ゴードン・セルフリッジ(Harry Gordon Selfridge)がパテック フィリップに特別注文したものだ。セルフリッジはモータースポーツ、特にスピード記録の功績で当時絶大な人気を誇ったヘンリー・シーグレーブ(Sir Henry O'Neal de Hane Segrave)の魅力的な英雄像に引かれ、シーグレーブを意識してこの時計を注文したようだ。その時計の裏蓋にはふたりの友情を記念する刻印が刻まれている。

セルフリッジが注文した時計は、普通のクロノグラフではなかった。1923年から1939年にかけて、パテック フィリップは11本のワンプッシュ スプリットセコンド クロノグラフを製作したが、そのうちの2本はパテックがカルティエのために製作(およびサインを)したものだ。連続生産されたツープッシュのRef.1436とは異なり、完全オーダーメイドのようだった。1938年から1971年にかけて製造されたRef.1436 スプリットセコンド クロノグラフ(文字盤とケースデザインはRef.130のシンプルなクロノグラフと共通)は140の例が知られているが、これらの特注品はまったく別のものであり、両者を混同してはならない。カスタムされたワンプッシュのスプリットセコンドシングルボタンウォッチは、ヴィクトラン・ピゲのエボーシュを採用し、ラウンド型とクッション型のふたつのカテゴリーに分かれた。これらのうち、クッションケースは5本だけで(1本は興味深い例で、左利き用モデルであった)、2本はパテック フィリップミュージアムに寄贈されている。1920年代後半に、スプリットセコンドクロノグラフをワンプッシュデザインにしたブランドは非常に珍しく、このデザインを採用したのはパテックだけだった。この時代の究極のデザインかもしれない。

死亡事故当日にパテックをつけた、ヘンリー・シーグレーブ。この写真を最初に見つけたのはInstagramの@niccoloy。Photo: Courtesy Monaco Legend Group

カーレースで長年の経験を持つシーグレーブは、1921年にイギリスで開催された初の耐久カーレースで優勝したあと、最終的に陸上と海上でのスピード記録を追い求めるようになった。1926年3月16日、シーグレーブは時速152.33マイル(約245km)で陸上速度記録を樹立し、わずか1年後にデイトナ・ビーチで初めて時速200マイル(約321km)を記録した。ナイトの称号を授与された数カ月後、シーグレーブは時速98.76マイル(約158km)での水上スピード記録に挑戦したが、3回目の通過でボートが恐ろしい形でクラッシュし、水から引き揚げられた。シーグレーブは記録更新の知らせを聞いたあともしばらく生存していたが、急性肺出血で亡くなった。アメリア・イアハート(Amelia Earhart)の伝記(1939年に夫のジョージ・パットナムが執筆)に登場するセルフリッジの証言によると、パテックはシーグレーブの手首にあったまま亡くなり、セルフリッジに返却された。

この物語でのイアハートの立場は、セルフリッジが自分の地位を利用して、最も興味深い人物を周囲に集めようとした、というひとつの例である。彼女の業績を紹介する必要はないが、知らない人のために説明すると、彼女は大西洋を単独で横断した最初の女性飛行士だった(ほかにも多くのことを成し遂げている)。以下、伝記『Soaring Wings』より。

“彼女はセルフリッジの家に行き、必要なものを集めて見せているあいだに、ハリー・セルフリッジと息子のゴードンが製作したユニークなサインアルバム(板ガラスの窓)に、ダイヤモンドペンシルでサインするようすすめられた。その後、ゴードン・セルフリッジとの友情の礎が築かれたのである。この友情はのちに、彼が彼女に時計を贈る、非常に興味深い物語へとつながっていく”。

あるとき、アメリカにいるイアハートの元を訪れていたセルフリッジは、シーグレーブの時計を彼女にプレゼントした。それと引き換えに、彼女はセルフリッジに大西洋横断飛行の2度の記録達成時で着用していたロンジンを贈った。現在スミソニアン博物館に飾られているこのロンジンは、国際宇宙ステーションにも持ち込まれたことがある。

Amelia Earhart wearing the Patek Split-Second Single-Button Chronograph
パテックのワンプッシュ スプリットセコンド クロノグラフを着用するアメリア・イアハート。Photo: courtesy of the Amelia Earhart Collection at Purdue University

上の写真を拡大すると、文字盤とレイアウトが確認できる。

セルフリッジはイアハートに時計を提供した際、「私はますます、そのような状況でつくられた時計、そして私が彼女に抱いた強烈で個人的な愛情のように、大きな敬意を払う人物に受け継がれるべきだという気持ちを抱くようになっていました」と述べていた。彼女はこの取引を受け入れたが、彼女にとってロンジンの時計に特別な思い入れがあることは明らかで、彼女が望むときはいつでもそれと交換できるように求めた。

2014年のサザビーズで296万5000ドル(当時の相場で約3億1411万円)にて落札された、ブランド初のスプリットセコンドウォッチのケースナンバー124824など、パテックはこれらの時計のいくつかをミュージアム用に購入しており、コレクターがこれらの重要な時計を所有する機会を狭めている。またRef.5959に似た前述した“最初の”スプリット クロノグラフや、クッションデザインのRef.5950などは、現代のリリースのインスピレーションにもなっている。

この時計は、アメリカ人の所有者がモナコ・レジェンド・グループに売却について相談したことで、公に再発見されたものだ。現オーナーの祖父は1960年代にこの時計を入手している。しかしダン・ホッジ(Dan Hodge)氏が自身のブログ、“28DaysEarly”で詳細に追跡したようにこの物語には難点がある。それは、パットナム(Putnam)による1939年の著書では、イアハートが1937年に行方不明になったとき、セルフリッジ/シーグレーブの時計をしていたと主張している(そしてセルフリッジもそう信じていた)という事実である。もしそれが本当なら、彼女の飛行機と遺体が回収されていないため、ここで時計を見ることはできない。しかし、トルテラ&サンズ(Tortella & Sons)社による“ディープ・スタディ”ドキュメントの、歴史研究を担当したコナー・オライリー(Conor O’Reilly)がパデュー大学のアーカイブで発見した画像には、イアハートが別のデザインのラウンドケースウォッチ(おそらくツートンカラーのダイヤルを持つ、スリーカウンター式クロノグラフ)を身につけた姿が写っている。

ロレックスと、時計のカスタマイズ業者アルティザンズ ドゥ ジュネーブ(Artisans De Genève)との訴訟について、

スイス連邦裁判所は、AdG(アルティザンズ ドゥ ジュネーブ)が時計の所有者の要求に応じて、商業的ではなく個人的な使用に限り、時計をカスタマイズできるとの判決を下した。裁判所はまた、限られた例外を除いて、AdGは同意なしに他ブランドの商標を使用・改変した製品を販売または宣伝することはできないと裁定した。

したがって同裁判所は、顧客がすでに所有している時計をAdGに提供してカスタマイズするという現在のビジネスモデルは、いかなる法律にも違反しないと判示した。しかし、その決定に照らして、裁判所はAdGのマーケティングと広告が適用される法律に違反しているかどうかの問題を再検討するべく、下級裁判所に差し戻しをした。

スイス連邦裁判所がこのパーソナライゼーションとカスタマイズの問題を検討したのは今回が初めてのことであり、ロレックスやAdG、時計業界(およびそのほかの業界)に長期的な影響を及ぼす可能性がある。詳しく見ていこう。

まず背景について
adam levine rolex collection
アダム・レヴィーン(Adam Levine)氏の時計コレクション。アルティザンズ ドゥ ジュネーブによってカスタマイズされたデイトナを含む、たくさんのロレックスがある。

2020年12月、人気のロレックススーパーコピー 代引き専門店はAdGを提訴している(注:スイス裁判所の判決ではカスタマイザーの名前は伏せられていたが、そのほかの詳細からアルティザンズ ドゥ ジュネーブであることは間違いない)。話はそれ以前の2020年2月に、ロレックスがAdGから3万2580スイスフラン(当時の相場で約370万円)で改造デイトナを密かに購入したことから始まった。これはAdGがオリジナルデイトナを提供し、カスタマイズを施すというものだった。またこのカスタマイズには、文字盤にあるロレックス、オイスター、コスモグラフのマークと王冠のロゴを削除して付け直すことも含まれていた。訴訟を起こす前に、ロレックスはAdGに対し、カスタマイズされたデイトナを入手したことと、商標権侵害の可能性があることを通知した。

ロレックスからの通知後、AdGはビジネスモデルを変更し、カスタマイズされた時計をウェブサイト上で販売しないようにした(ロレックスはこの方法でデイトナを購入している)。AdGは顧客がすでに所有している時計をAdGに提供し、カスタマイズしてもらうという現在のビジネスモデルに移行したのだ。

AdGがカスタマイズした、スパイク・リー(Spike Lee)氏の“クールハンド・ブルックリン・デイトナ”。ロレックスが特許を侵害している可能性をAdGに通知したあと、AdGは個人顧客がすでに所有している時計にのみ手を加えるビジネスモデルに変更した。

裁判所はまた、同社が“私的使用のために顧客の要求に応じて、時計のパーソナライズサービスを提供する独立した工房”であり、時計の製造や販売を行っておらず、いかなるブランドとも関連していないという警告を閲覧者が受け入れた場合にのみ、AdGのウェブサイトへアクセスできると述べた。さらに、AdGは時計をパーソナライズしたあと、オリジナルのメーカー保証が無効であることを明記して、顧客に新たな保証制度を提供していた。

2023年2月、下級裁判所はロレックスを支持し、広告やカスタマイズの提供を含め、AdGがロレックスの商標を使用することを禁止した。その後、AdGはこの決定に不服申し立てをした。

ロレックスはHODINKEEのコメント要求に対して、“ロレックスは、公式ネットワークおよび認定サービスセンター以外の第三者による製品のいかなる改変も、それがいかなる者であれ承認していません”と回答した。“管轄外で行われたすべての作業は、ブランドが提供するすべての保証を無効にすることになります。したがってオリジナルと見なすことができず、つまり緑色のロレックスシールで保護されていない状態になります。1度改造されると、その時計は精度、防水性、自動巻き、自律性、耐磁性、信頼性、耐久性の面で、ブランドの品質基準を満たしていないため、公式ネットワークで提供されるロレックスのサービスを受けることができなくなります”。

アルティザンズ ドゥ ジュネーブは、HODINKEEのコメント要求に回答していない。

異なるふたつの法的問題
rolex daytona john player special
クライアントのために時計をカスタマイズするとき、AdGはこの“ジョン・プレイヤー・スペシャル”デイトナのような、ヴィンテージロレックスの時計を参考にすることが多い。

まず第1に、商標の目的は、企業の製品やサービスを他社の商品やサービスと区別することだと覚えておく必要がある。消費者が混乱する可能性がある場合、つまり、購入者がロレックスの時計を購入したと思っていたが、実際には別の会社の時計だった場合に、侵害が起こりうるということだ。スイス連邦裁判所によると、この訴訟にはふたつの異なる法的問題があると提示している。

物品の所有者に代わって、要求に応じてパーソナライズする。最初の事例は、顧客がAdGに時計を持ち込んだ際、所有者の要求に応じて私的使用のためにカスタマイズするときに発生する。裁判所は、この活動は“サービス提供者が物品の所有者の要求に応じて行動し、カスタマイズされたアイテムがその所有者に返される場合に限り合法”とし、市場に提供されるものではないと判示した。
カスタマイズした製品を販売するためのマーケティング・広告。この2番目の事例は、カスタマイズされた時計の広告、販売、および販売用の提供を含む。裁判所は、ブランドの所有者(この場合、ロレックス)によって許可が与えられない限り、この種の活動は違法であるとした。
AdGとロレックスに関連するこれらふたつの法的問題を検討する前に、裁判所はまず、スイス法の下で“商標の消尽”または“権利消尽の原則”と呼ばれるものが存在すると明らかにした。これは基本的に、商標権者が商品を販売したあとは、それが個人的な使用のためである限り、買い手がその商品で何をしようとも、商標権者はコントロールすることはできないことを意味する。後述するように、これは商標の私的使用が許可されていることを意味するため、重要になる。言い換えれば、商標が誰かの時計をカスタマイズするためだけに使用されている場合、それは販売のために提供されていないので、ロレックスの権利を侵害しておらず、より広範な消費者の混乱を引き起こす可能性がある。

ロレックス対アルティザンズ ドゥ ジュネーブの判決
問題1: 所有者代理でパーソナライズする

adam levine's artisan de geneve daytona
AdGがカスタマイズした、アダム・レヴィーン氏の“ネオン”デイトナ。

前述のように、AdGはロレックスから特許侵害の可能性があると指摘されたあと、ビジネスモデルを変更した。裁判所によると、AdGの以前のビジネスモデル下での活動は、適用される法律に反していた。というのも市場でカスタマイズされた製品を宣伝し、販売していたからである。しかし、AdGの新しいビジネスモデルでは、クライアントはすでに所有している時計を提供する必要があり、そのクライアントの要求に応じて時計をパーソナライズするのみで、時計の一般販売は行っていない。裁判所は、AdGのカスタマイズがロレックスの商標を削除して再適用する場合であっても、この改訂ビジネスモデルでは適用される法律に違反しないと判断した。

裁判所の論拠はこうだ。

誰かが時計を購入したとき、好きなように改造することができる。またそのカスタマイズが所有者のためのものであり、商業目的ではなく個人的な使用に限定される限り、時計の所有者が代わりの別の会社に時計を改変またはカスタマイズさせることを妨ぐことはできない。これは商標権の消尽の原則の拡張であり、1度ロレックスが時計を販売したあとは、個人的な使用に限り、所有者個人らがその時計をどうするかは自由である。

裁判所は、商品が商業的に提供されていない以上、市場で商品やサービスを区別するという商標の目的を損なうものではないとしている。

問題2: 広告とマーケティング

裁判所は、AdGの現在のビジネスモデルはこのように合法であると判断したが、AdGの広告とマーケティングに関連する2番目の問題については、同じ結論を下す準備ができていないとした。

裁判所によると、第三者が改造したブランド製品を販売したい場合は、商標権者の承認を得なければならない。例えば、AdGが顧客向けにカスタマイズしたロレックスの時計を宣伝するには、ロレックスの承認が必要になる。これは同社の商標を商業的に使用することになるからだ。

しかし、AdGによるロレックス商標の使用を完全に防ぐことはできない。特に広告において、そのような使用が広告されているサービスと明確に関連している限り、AdGは情報提供の目的で第三者の商標を使用することができる。

しかしAdGとロレックスのあいだにつながりがあるという誤った印象を与えれば、そのような行為は違反となる可能性がある。言い換えれば、AdGは消費者の混乱を招いたり、ロレックスの評判を悪用したりするようなことはできないということだ。

愛しい君との関係が終わっていく
裁判所は、AdGは個人的な使用のために時計をカスタマイズすることができると判示しながらも、広告とマーケティングに関する2番目の事例は、判決に照らしてさらなる検討をすべく、下級裁判所に差し戻しをした。下級審は、AdGのウェブサイトやそのほかの広告およびマーケティング活動を調査し、裁判所が判決で定義したパラメータに違反しているかどうかを判断しなければならない。スイス連邦裁判所は最初の判決で、下級審はAdGのウェブサイト上でのロレックス商標の使用と、それらがAdG自身のサービス提供と明確に関連しているかどうかを適切に評価しなかったと書いている。さらに“非常に評判の高いブランド”であるロレックスが、AdGの活動の評価にどのような影響を与えるかについては検証していない。

“非常に評判の高いブランド”とは?
これは訴訟の主な争点ではないが、スイス連邦裁判所はロレックスが“非常に評判の高いブランド”であることを明確に指摘し、通常の商標所有者では得られない特別な保護が与えられているとした。例えば“高い評価”を得ているブランドは、たとえ製品やサービスが競合するものでなくても、(サービスを識別するための)マークをほかの製品やサービス、あるいは広告に使用することを妨げる可能性がある。仮に第三者がベッドシーツを販売するためにコカ・コーラを使用したり、香水を販売するためにナイキを使用したりすることはできない(どちらも実際の事例だ)。

これは興味深い指摘であり、ロレックスにとっては喜ばしいことだが、法的な意味合いもある。スイス連邦裁判所はAdGの広告の問題を再び取り上げる際には、ロレックスの“非常に評判の高いブランド”としての地位が法的判断にどのように影響するかを考慮する必要があると述べている。

大きな問題: 誰がパーソナライズできるか?
artisans de geneve honey gold
ロレックス デイトナをカスタマイズした“ハニーゴールド”プロジェクトを示すアルティザンズ ドゥ ジュネーブのスケッチ。

訴訟はロレックスとAdGのあいだで行われているが、スイス連邦裁判所はこの訴訟で提起された個人使用のためのカスタマイズ問題について、判決を下したことはないと述べている。しかし、これは時計産業に限らない重要な問題である。

“ブランド品のパーソナライゼーションの重要性が高まっていることは、オリジナルの第三者ブランドを有する商品を改造する企業とブランド所有者とのあいだに新たな紛争が生じていることを反映している”と裁判所は記している。

ロレックス公式サイトでデイトジャストを“設定”したページ。

ロレックスとAdGの話に戻ろう。ロレックスのウェブサイトに行くと、すでに時計を“設定”するオプションが用意されている。例えばデイトジャストのページにアクセスしても、製品カタログは表示されない。代わりに、自分でデイトジャストの構成を選ぶよう求められる。まずサイズ(31、36、41mm)を選び、次に素材、ベゼル、(素材によって)ブレスレット、ダイヤルを選ぶ。デイトジャストの場合、その選択肢はあっという間に数百にのぼる。これは、ロレックスの固定されたSKUを一般消費者に見せる別の方法であることは周知の事実かもしれないが、パーソナライゼーションという何か別のもののように感じ始めるかもしれない。AdGが顧客に提供するような、真のパーソナライゼーションを、ロレックスが提供する未来は容易に想像できる。実際、近くのロレックス正規店に行くと、さまざまな言語での日付・曜日ホイールなど、本格的なカスタマイズオプションがすでに用意されている。

seiko mod
時計のコミュニティ、特にセイコーのモデファイには長い歴史がある。Image: Courtesy of @seikomodder.

これがロレックス時計コピー 代引きの目指す方向であるならば、AdGのパーソナライゼーションビジネスはさらに競争力を増しているように感じられる。また、ロレックスは以前にも訴訟を起こしてカスタマイザーを締め出したこともある。数年前、アメリカのラ・カリフォルニエンヌ(Le Californienne)社が、鮮やかな色のヴィンテージデイトジャストやデイデイトの文字盤をカスタマイズして再販売していたのを防止することに成功している。この訴訟は、ロレックスの製品ロードマップを示唆していたかもしれない。というのも、この訴訟のわずか数年後に、ロレックスは鮮やかな色のオイスターパーペチュアルダイヤルを発売したからだ。

スイス連邦裁判所が指摘しているように、パーソナライゼーションは消費者にとってますます重要になっており、ロレックスもそれを認識しているようだ。

一方、AdGは絶妙なバランスを保とうとしている。スイス連邦裁判所は、同社の中核的なカスタマイズ事業は合法であるとしているが、カスタマイズサービスのマーケティングや広告の方法には極めて慎重でなければならず、ロレックスの商標を使用するには、情報提供の目的やAdGのサービスに関連する方法である必要がある。AdGのソーシャルメディアでは、それぞれのカスタマイズに使われている“独自の職人技”や技術を強調した投稿が見られる。それぞれの投稿には、AdGが“お客様の唯一の要請に基づいて…お客様の私的使用のためにのみ”仕事を行うと説明する、苦渋の法的免責事項が添えられている。

裁判所の判決は、時計愛好家にとっておそらく直感的に感じられること、つまり個人的な使用に限り自分の時計で好きなことができると肯定し、明確にした。このカスタマイズや改造をサードパーティに依頼することができると。

結局のところ、時計のカスタマイズ、改造、バスダウン(時計を豪華な装飾やダイヤモンドで飾ること)には長い歴史がある。それは個人的な楽しみであり、いかなるブランドもそれをコントロールすることはできないはずだ。同時に、ブランドにはブランドを守るという正当な利益もある。このふたつの利益のバランスを取るのは難しいことで、今のところはロレックスとAdGの争いになっているが、これは時計の将来に大きな影響を与えることになる。

デイトウィンドウを正しく活用した5本の時計

登場すると必ずと言っていいほどコメント欄から批判を受けるとわかっているひとつの機能があるとすれば、それは控えめな日付窓である。見た目の美しさ、視認性、デザインの優劣については多くの正当な主張があり、手首を見て日付が簡単に確認できることは、スマートフォンの時代においても実に実用的だ。重要なのはその機能を正しく実行することであり、幸いにも多くのブランドがそれを行なっている。ここでは、さまざまな種類の日付窓を持つ時計のなかから、再検討していただきたい5本の時計を紹介しよう。

オーデマ ピゲ ロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラ シン、チタン&プラチナ – カーラ・バレット

オーデマピゲコピー販売おすすめ優良サイトが高価なことも、このようなまとめ記事で高価な時計ばかりを選んでいることも、そしてそれが気取っていて腹立たしく感じていることも知っている。しかし、わたしはオーデマ ピゲが日付窓の付いたいい時計をつくっていると思っているから仕方がない。ほとんどの愛好家は日付窓を嫌うが、わたしはそれを楽しんでいる。なぜか? わたしはときどき日付を知る必要があり、それを手首で読みたいと思うからだ。いい日付窓を製作するための成功の鍵は、控え目さである。言うまでもなく、オーデマ ピゲ ロイヤル オーク(特にチタン&プラチナの新しいバージョン)は、常にダイヤルとマッチした日付窓と小さな文字が素晴らしい仕事をしてくれる。唯一の問題は、それがあまりに小さいため読むのが難しいときがあること。チームのほかのメンバーと同じように、HODINKEEのメガネを手に入れるときが来たようだ。

372万6000円(当時の販売価格)。

ベル&ロス BR V2-93 GMT – ジョン・ビューズ

ベル&ロスは、文字盤の全体的なデザインと調和しつつ読みやすさを提供するという難しいバランスを保ちながら、日付窓を提供している。BR V2-93 GMTは、うまく統合された日付窓の一例に過ぎないが私はそう感じるし、ベル&ロスのほかの多くの時計に同じ評価ができるだろう。ここでの基本的なアイデアは、日付を小さくし、タイポグラフィと配色をほかの文字盤要素とできるだけ一致させ、デザインを損なうことなく情報を提供することである。主にETAベースムーブを搭載するベル&ロスの生産は、世界を変えるほどの時計の技術革新を提供するわけではないものの、私はこのブランド、特にラウンドウォッチでは、現代の時計製造の価格帯で最高の時計デザインを提供していると思うのだ。

46万4400円(当時の販売価格)。現在は52万8000円(税込)

ADVERTISEMENT

A.ランゲ&ゾーネ サクソニア・アウトサイズデイト – ジャック・フォースター

日付表示にはさまざまな方法があるが、基本的には3つのアプローチのいずれかに分類される。まず、時計が提供する情報のひとつとして扱うこと。その場合は数字を読み取りやすい大きさにして、慣習に従って3時位置に配置し、それ以上考える必要はない。2つ目は、それを必要悪として扱うこと。ある人気のヴィンテージモデルの新しいバージョンには日付がなかったとする。マーケティング部門は、その時計は日付があったほうが売れると言うのでそれを入れるが、できるだけ目立たないようにしようとする(その場合、一般的には申し訳なさそうに見えるだけでなく、美的にも失敗に終わる)。

3つ目のアプローチは、時計デザイン全体の必要な部分として扱い、適切に統合することである。1994年にランゲ1がデビューして以来、ランゲ&ゾーネは一貫して統率が取れた日付表示で業界をリードしてきた。新しいサクソニア・アウトサイズデイトは、ランゲ1のような躍動感はないものの、ランゲ1と同様、日付窓を全体の文字盤構成にいかにうまく組み込むことができるかという模範例である。そうすることで、その部分の総和よりも大きな全体の一部として成り立つのだ。

300万2400円(当時の販売価格)

ブレモン エアコー マッハ 3 – ジェームズ・ステイシー

6時位置にある日付窓。おそらくよくできたビッグデイト表示を除けば、シンプルで手間のかからない6時位置の日付は、文字盤のバランスを崩すことなく日付を入れるための最良の解決策である。ブレモンの美しいエアコー マッハ 3は、ブラックの日付表示がRAF(ロイヤルフォース)ブルー文字盤にコントラストを添えている。シンプルで控えめなこの日付窓はマッハ 3のクリーンなダイヤルデザインのインデックスや余白とほどよくマッチする。見やすく、控えめで、マッハ 3はそれがあることでよりよくなっていると思うのだ。

現在は3795ドル(日本円で約57万4000円)

オリス ダイバーズ 65 デイト ブロンズベゼル – スティーブン・プルビレント

僕にとって、この時計は日付表示とのバランスが絶妙です。またデザイナーが1度に万人にアピールするために、どこかに隠そうとしたようにも見えません。6時位置に配することですべてがシンメトリーになり、ブラックのディスクにホワイトのプリントを施すことで、文字盤の下半分で大きなもののように目立つのを防ぎます。また、このインデックスがスリムで、ほかのインデックスよりも少し高い位置にある点が気に入っています。これによりほかのインデックスとの比率が保たれ、オリスはその下に小さな夜光を収めることができるのです。もし僕がデイト付きのダイバーズウォッチを手に取るとしたら、おそらくこの時計でしょう。